ワインの近代化 その2 ワインの神秘に科学技術のメスが《ワイン片手に経営論》第11回

■ワインづくりの技術の発展

 ワインづくりの技術は、19世紀になって様々な病害虫の発生があったからこそ、技術アプローチが検証され、そして最も有効なアプローチが採用されて、大きく前進しました。この過程で、ワインに関する神秘も徐々に解き明かされていったのです。

 続く20世紀前半は、おそらく世界大戦などの理由により、あまり技術は進まなかったようですが、20世紀後半になって新たな胎動が起こりました。場所は、20世紀の覇者、米国です。米国では、ヨーロッパから移住してきた移民の一部が、「祖国のようなワインを飲みたい」という願望のもと、精力的にワイン造りの研究を始めていたのです。彼らの目標はフランスでした。

 たとえばカリフォルニア大学デービス校のウィンクラー博士は、日照時間と温度の関係をつぶさに分析して、カリフォルニアのどこがフランスのどの地域に気候が似ているか、明らかにしていきました

 また、現在米国においてトップクラスのワイナリーの創業者である故ロバート・モンダヴィ氏も、さまざまな技術的工夫を行いました。例えば、低温発酵法ですが、これは発酵による温度上昇を抑えて香りが揮発することを抑制し、フレッシュ&フルーティなワインを造る技術です。ロバート・モンダヴィ氏は後年、「ここですごいワインが造れることは分かっていた。しかし、同時に私たち自身の能力を高め、技術を磨かなければならないことも分かっていたんだ」と言っています。

 それ以外にも、乳酸菌の特性を上手に活用したマロラクティック発酵という技術も、米国で最初に実用化されました。この技術は、ブドウ果汁に含まれるりんご酸を乳酸菌の働きによって乳酸に変化させるものですが、この技術により、ワインにヨーグルトのような柔らかさやバターのような風味をもたらすことが可能となりました。

 こうした米国発の技術は世界にも影響を与え、世界中でワイン造りの研究が大いに発展しました。最近有名な技術としては、ミクロ・オキシジェナシオンというものがあり、長年樽熟成をさせなくても、樽熟成をさせたような香りをワインにつけることも可能になっています(なお、このアプローチの良し悪しはワイン業界でも賛否分かれているようです)。

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