こうした産業構造の変化で出現したレア職種に関して、人材紹介会社に「紹介してください」と依頼をしても、おそらく、なしのつぶてになることでしょう。レア職種の人材はわざわざ転職サイトや人材紹介会社経由で転職はしません(引く手あまたの人材はヘッドハントされて動きます)。ただ、存在する数が少ない人材を探すからミスマッチが多い……とは言い切れません。さらなる理由が存在します。それは、求める人材レベルに対する処遇面での「ズレ」があるから。
《マーケットプライスに合った処遇をしないから採用が実現できない》
ということです。
求める人材の報酬レベルと「ズレ」があった事例
たとえば、日本の大企業では年功的な昇給ルールが厳然と残っています。そこで人材レベルが高くても年齢的に若い人だと、高い報酬で採用できないのです。
取材した不動産会社では、海外企業の日本誘致のため、語学堪能で西海岸に人脈がある営業担当を採用するべく採用を試みましたが、誰一人応募してくれる人はいませんでした。
日本ではそれなりの知名度がある会社なので人事部は自信があったようですが、通常の営業社員と同等の待遇で働きたいと思う人はいませんでした。おそらく、求める人材の報酬レベルと1000万近いズレがあったのではないでしょうか。
ちなみに、そのポジションは1年以上も空白状態です。人材のミスマッチ率の高さは、企業が求める求職者のレベルが高すぎることもありますが、それよりもハイレベルの仕事でも十分な待遇を保障しようとしないため、ハイスキルの人材が働きたがらないことも大きな要因なのでしょう(さらに取材してみると、日本企業は人材レベルが高くても評価せず、協調性など別の要素が重視されるのが人が集まらない原因だという意見がたくさん出てきました)。
こうした企業における採用スタンスの問題に加えて、大学教育の体制にも問題があると指摘する声もあります。何らかの専門はあるものの、卒業時に業務に活かせるような専門性までは身につかない学部が多い、というのは感覚としてわかる方も多いのではないでしょうか。
先ほどのヘイズ社の調べによると、教育の柔軟性(教育制度が労働市場の需要に対応できているかどうかを示す指標)が6.2と高いドイツでは、人材ミスマッチ率が3.3と低いそうです。そのことを考え合わせても、日本の教育が労働者のスキル確立につながっていないために、ミスマッチ率が高くなっている可能性があります。
ちなみに世界的に教育水準が高いとされている日本の「教育の柔軟性」が2.8と非常に低いということです。これは、日本の教育レベルが高い水準にありながら、企業側の視点において労働市場の需要を満たすような人材が生み出されていないということを示しています。中長期的にミスマッチを解消するには、大学教育の体制を改革する必要があるのは間違いありません。
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