現在の労働市場には「質的余剰」が存在する

配偶者控除撤廃を含めた簡素な税体系が必要

多くの女性が縛られている103万円や130万円の壁など、歪みの多い日本の税制。働く人のインセンティブを歪めない税体系への見直しが必要だ(写真:リュウタ/PIXTA)

アベノミクスが発動された2013年から、日本経済は回復に転じ雇用者が増えて家計全体の所得水準の底上げが実現した。依然道半ばながらも脱デフレのプロセスは続き、株式市場においても日本株が復活した。2015年初のコラムでは海外株と対比させ、消去法的に日本株のアウトパフォームに期待できるとの考えを示したが、年央の波乱はあったが上昇相場が続き年末を迎えそうである。

アベノミクスへの評価はさまざまだが、日本のGDP成長率が2014年以降高まらなかったことを受けて、金融・財政政策による景気刺激策(総需要安定化政策)に対して懐疑的な見方がある。すでに労働力や企業の設備施設が足りず、いわゆる供給制約に直面していることが、過去2年の日本の経済成長にブレーキをかけているとの判断がこうした認識の背景にある。

人手不足が経済成長を阻害するのは脱デフレ後

人手不足時代が到来したとされ、失業率や有効求人倍率などの改善で、労働市場が「逼迫」していることが一つの根拠になっている。ただ、実際には、先日のコラムでも紹介したが、名目賃金上昇率の伸びは依然緩慢である。労働市場で供給制約が広がっているなら、企業の雇用・賃金戦略が変わり賃金上昇圧力が高まっても不思議ではない。多くの企業は、コスト抑制を最優先にして、相対的に人件費が低めの労働者を確保し、短期的な人員不足に対処できる段階にあるとみられる。

人員不足が深刻になり、それがビジネスの障害になると考えれば、企業は、残業が容易な正社員化を進めることで、労働投入を増やすことができる。非正規社員の採用が増えて一人当たり賃金が低いままになっていることには、労働市場において「質的余剰」が存在することを意味する。先日紹介した男性の労働参加率が低下したままである点、賃金より先に改善している失業率にも低下余地がある点、などをあわせれば、現段階では、労働市場における供給のボトルネックが、日本の経済成長を制約している側面は限られるとみられる。

今は労働市場のボトルネックが成長を阻害する側面は小さいが、プラス2%前後でインフレ率が安定する2,3年後には労働市場に存在する欠点が問題になる可能性がある。具体的には、配偶者控除などにかかわる103万円や130万円の壁など社会保障を含めた税制の歪みや解雇ルールが明確でないことが、労働供給の制約要因となり、経済成長を抑制する要因になる可能性がでてくることである。こうした問題への対処として、例えば企業への限定的な補助金給付が検討されているが、配偶者控除の撤廃を含めた労働者のインセンティブを歪めない、簡素な税体系への見直しが必要と思われる。

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