日銀の政策対応は、後手に回りすぎている 今から信頼性を回復する唯一の手段とは?

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日銀の黒田東彦総裁 (写真:Thomas Peter/ロイター)

日本銀行が10月30日の金融政策決定会合で追加緩和を見送ったことで、日銀ウォッチャーの間には落胆が広がった。何らかの緩和策を期待していたJPモルガンは現在、物価をめぐる状況が著しく悪化しない限り、もう1年かかると予想。「日銀は昨年の10月のような先手を打つ姿勢とは異なり、さらに後ろ向きになっている」との見解を示している。

日銀は現在、実際に事が起きてから対応するようになっている。インフレ減速の予防策を講じるのではなく、実際にインフレが減速するまで動きを見せることはないだろう。2年前に日銀は、2015年までにコアインフレ率 (生鮮食料品を除く) が1.9%に達するだろうとしていたが、現在ではわずか0.1%にとどまると見ている。

インフレ2%目標の達成は遠く

日銀政策委員会の中にも、黒田東彦総裁が任期満了を迎える2018年3月末までに2%のインフレ目標が達成可能か疑問視するメンバーが数人いる。政策委9人による、2017年度中のコアインフレ率の予想中央値は1.8%だ。しかし、日銀の「展望レポート」によれば、9人中5人は「インフレ率がもっとも低くなるリスクがある」と考えている。

朗報があるとすれば、委員会の誰ひとりとして、1990年代半ば以降に日本を苦しめてきた全面的なデフレに戻るとは予測していない点だ。

2%のインフレ目標達成に金融緩和は必要だ。しかし、それで十分ではないのだ。黒田総裁は「車が走るにはガソリンが必要だから、15ガロンのタンクに30ガロン入れましょう」と言っている車の整備士のようだ。「でも黒田さん、ギアも壊れていますが」と伝えると「では、60ガロン入れましょう」との答えが返ってくるのだ。

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