男女不平等が損失をもたらすことは、これまでにも広く実証されてきた。だが、米マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)による新たな研究によると、こうした損失は従来の試算よりも大きく、影響も広範囲に及んでいる。
この研究では15の指標が用いられた。その中には、賃金や就労率といった経済的な平等を測るもの、さらには社会的、政治的、法的な平等を測るものが含まれ、95カ国の「男女平等度スコア」が算出された。この研究は世界の国内総生産(GDP)の97%、世界の女性の93%をカバーし、個々の指標に関する国別のスコアも示された。
男女が最も平等だったのは欧州と北米だった一方、最も格差があったのは南アジアだった。ただ、各地域内でも公職選出比率や政策優先順位における男女差などにより、かなりバラツキがあった。
平等実現すれば世界経済は26%拡大も
研究対象のうち40カ国で、就労率、賃金、指導的な地位、無報酬の育児・介護・家事といった労働関連分野だけでなく、法的保護、公職選出比率、女性に対する暴力などをめぐり、男女間で著しい不平等が認められた。
こうした不平等に伴う損失はかなり大きい。もし労働の面で女性が男性と平等となり、同じ就労率で同じ時間、同じ部門で働くならば、世界のGDPは2025年までに28兆ドル(26%)増えると推定される。世界経済に新たに米国と中国が加わるようなものだ。
最近の状況からすれば、労働における完全な男女平等が近い将来に達成されると考えるのは非現実的だ。しかし、各国がその国の含まれる地域で最も先進的な水準まで前進すれば、世界のGDPは2025年までに12兆ドル増える可能性がある。
今回の研究は、こうした目標の達成に向け、各国の政府や企業などが4つの主要分野(教育、法的権利、金融およびデジタル・サービスへのアクセス、無報酬の育児・介護・家事)に焦点を合わせるよう勧告している。
第1のステップは教育と技能訓練の充実で、これらは女性の就労率を高めると実証されている。男女間の教育格差が縮まれば少女や女性の地位は向上しやすくなり、男女産み分けのための中絶、児童婚、親密なパートナーからの暴力の減少につながる。