キャメロン英首相は、英国の欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票実施を提案した。これはほんの数年前なら、かなり安全な賭けに思えたかもしれない。当時であれば、ほとんどの国民が残留に投票しただろう。ギリシャ危機がユーロ圏で大混乱を引き起こし、何十万もの難民が到着してEUの一部国境が管理不能に陥る前だったから。
キャメロンは実際、欧州の他の指導者たちに、EU残留の条件として示した改革要求を飲ませられるかもしれない。改革案の内容は、非ユーロ圏の加盟国が単一市場に完全にアクセスするのを保証したり、EUレベルで官僚主義を弱めることなどだ。ただ、改革案のうち、EUの移民が受ける恩恵を減らせとの要求は、EUの指導者にとって最も受け入れ難いものとなろう。
離脱は輝かしいものになり得るのか
英国の欧州懐疑主義者には、弱腰すぎるとキャメロンを批判する者もいる。沈みゆくように思える船をとにかく乗り捨て、独自の素晴らしい道を歩むという英国内での誘惑は、ますます大きくなっている。これはもっともなことだ。問題は、“Brexit” (英国のEU離脱) が、支持者が想像したがるような輝かしいものになるかどうかだ。
EU離脱による明るい見通しはこうだ。ブリュッセルのルールから解放されると、英国は再び世界の自由の象徴となり、中国から尊敬を受け、二国間の「特別な関係」で米国と結び付き、そして常に欧州大陸諸国と友好的な商業関係を持ち続ける。ビジネスは急成長し、シティ・オブ・ロンドンは繁栄し、英国人はEUや他の国々の奴隷には決してならない。
実際には、事はそう上手くは行かないだろう。最近アイスランドを訪問した後、キャメロン自身が語ったように、非加盟国としてEUとの自由貿易を行うノルウェーのような選択肢は、理想とは程遠い。
ノルウェーはスイスと同様、EUの単一市場ルールに従わなければならない。しかもそのルール策定には、何の発言権もない。またノルウェーは、多額のお金をEUの予算に拠出しており、国境を越えるヒトの自由な移動を、難民を含めて受け入れなければならない。
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