一流プロ野球選手の調整はここまで徹底する 42歳の三浦大輔はいかに調子を高めるのか

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キャンプ序盤は1球1球を全力投球するわけではない。ブルペンでの投球練習を見ていると、投球フォームは実戦仕様に見えて、最後の腕の振りだけ少し力を緩めているように見えた。

「ボールが遅いので手を抜いていると思われるかもしれないけど、これでも結構腕を振っているんですよ(笑)。キャンプインして最初の時期は1球1球、丁寧に投げること、バランスを重視しています」

DeNAの木塚敦志投手コーチは「全力で投げないと言っても、バランスが良くないと三浦さんのようにあれだけの球数は投げられません」と証言する。ただ球数を多く投げるというだけでなく、三浦は左右両コーナー、そして低めへと丹念に投げ込んでいく。「1球1球、丁寧に」と本人が言うように、地道な積み重ねによって、バランスを体にしみ込ませていくのだ。

三浦は「これからキャンプ終盤にかけて、徐々に上げていきますよ」と力強く宣言した。プロ25年目の開幕に向けて、三浦流の投げ込み調整は続いていく。

奇行に映る動作のすべてに意味がある

東京ヤクルトスワローズのブルペンを見ていると、独特な調整をしている投手がすぐにわかる。今季プロ14年目を迎えるサイドスロー・館山昌平だ。

精力的に投げ込みをする合間に、突如全身を緩めて捕手にふわりと山なりのボールを投げることがある。しかも、何度もこのパターンを繰り返す。あれは何だったのか……と不思議に思っていると、今度はマウンドに帽子を置いて、姿を消してしまった。どこへ行ったのかと思ったら、館山はブルペンに併設されている室内練習場で汗を拭い、飲み物を飲んでいた。しばらくするとまたブルペンに戻り、投球練習を再開する。事情を知らずに見ていると「奇行」に映る館山の調整法だが、もちろんすべてに意味があった。

「2010年、2011年くらいに血行障害になって、投げていて指に血が通わなくなってしまうことがありました。そこで、感覚がなくてもフォームでもっていこうという考えから、指先の方向づけをしっかりするために、あれ(投球の合間に山なりで投げる練習)をするようになりました」

投球練習の途中でブルペンを離れるのは、「ゲーム中のインターバルをイメージしている」という。投手は試合のなかで一気に続けて100球を投げるわけではない。攻守交替を繰り返しながら球数を重ねていく。館山は途中で休憩を挟むことで、その感覚を再現しているのだ。

「そのとき(休憩中)にバットスイングをすることもありますし、ダッシュすることもあります。ブルペンではいろんなことを想定して、投げていますね」

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