元三重県職員が仕掛ける“わくわくする図書館” 図書館運営受託ベンチャーの夢
この仕組みを作ったリブネット社長、谷口とよ美の前職は三重県職員。27年間の勤務のうち、26年は県立高校の図書館運営に携わったが、49歳のときに退職、起業した。安定した公務員の職を捨て、ビジネスの世界に飛び込んだのは、図書館が学校教育において重要であるにもかかわらず、きちんと機能していない状況に不満を感じたからだ。
といっても、谷口は学校の事務職員として勤務しており、司書の資格はなかった。そもそも、「図書館の先生」には大きく二つある。一つは学校の教員で司書資格を持つ「司書教諭」、もう一つは司書の資格が必要ない事務職の「学校司書」だ。
どの学校も図書館の重要性は認識している。だが、教員の人数が限られている中で、司書教諭はクラス担任と兼務することが多く、通常の授業の準備などで図書館の仕事にじっくり取り組むのは難しい。一方、学校司書の多くは専門知識に乏しい。つまり、専門家を図書館に張り付けることが難しく、十分に役割を発揮できていない学校が多いのだ。
谷口は長年勤務する中で、冒頭の八郷小のような運営の独自ノウハウを確立。赴任した四つの高校では、先生たちを巻き込んで図書館の利用者数や本の貸出数を劇的に伸ばしてきた。ある高校では、本の貸出率を県立高校2位に押し上げた実績もある。谷口は仕事に充実感を覚えていたが、一方で閉塞感もあった。谷口が転勤すると、一から作り直し。前の高校もこれまで提供していた内容が変わり、やがて質を維持できなくなるのだ。
図書館は学校業務の中でも、司書教諭など専門知識を持つ人に丸投げされてしまいがち。個人の力量に依存する部分が大きく、担当者が代われば、サービスの質も替わるという属人的な仕事になっているのが現状だ。
しかも、「図書館の運営にはPDCAサイクルが確立されていない」と谷口は指摘する。貸出冊数のような目標もなければ、目標達成に向けてどう活動するか、それに対する評価をどうするかなど、体制や仕組みが整備されていないのである。
「図書館をよくする制度や仕組みを作るのは国や県など教育行政だと思っていたが、一向に改善しない。私が赴任した図書館は変わるが、いくら一人で頑張っても出会える生徒の数は限られるし、このままでは自己満足で終わってしまう」