元三重県職員が仕掛ける“わくわくする図書館” 図書館運営受託ベンチャーの夢

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生徒たちが図書館を利用するようになるにつれ、学校の先生たちの考えも変わっていった。それまで意識の隅にしかなかった図書館を、授業の補助施設として活用するようになり、学校全体に必要なものとして見るようになったのだ。

実績が知れ渡ると、リブネットに委託する学校も急拡大。2年目は一気に72の小・中学校が委託した。08年度は公立小・中154校を手掛け、延べ実績は749校に上る。

ビジネスとしても軌道に乗りつつある。売上高は右肩上がりで、08年度は3億円弱まで規模を拡大した。システムの先行開発費などで会社全体の損益は赤字と黒字を行ったり来たりしているが、業務受託に関しては黒字を維持している。

全国を見渡せば、まだまだ図書館が有効活用されていない学校が多い。活性化させようにも「学校の先生の負担が増えており、図書館専門として人手を割くのは難しいのが現状」(文部科学省児童生徒課の片山達也企画係長)である。その意味でリブネットのビジネスモデルは学校とウィン・ウィンの関係を築けるはずである。

だが抵抗も根強い。中身を知らない学校関係者からは「仕事を奪う敵」と見られてしまうからだ。当然、谷口の本意ではない。「業者が勝手に運営する仕組みを作ってはダメ。先生たちと一緒に作っていかなければ、学校は変わらない。学校側が欠けていると思う部分だけを任せてもらえばいい」。学校教育の主役は、生徒であり先生だ。リブネットはあくまでも生徒や先生をサポートする黒衣にすぎないのである。

だが、黒衣の頑張り一つで、主役は大きく際立つのもまた事実。リブネットが生徒や先生の意識を変えるきっかけを与えれば、点が線になり、線が面になり、やがて学校は活気を取り戻していくのだ。

日本中の学校を元気にしたい。それが谷口の描く夢である。=敬称略=

(中島順一郎 撮影:梅谷秀司、引地信彦 =週刊東洋経済)
 
たにぐち・とよみ
1952年三重県生まれ。73年三重県入庁後、県立高校の職員として勤務。2001年退職。02年有限会社「リブネット」を設立、04年株式会社化。

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