日本がモノづくりを捨て別の道を進むことはない--桜井正光・経済同友会代表幹事

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日本がモノづくりを捨て別の道を進むことはない--桜井正光・経済同友会代表幹事

経済同友会の代表幹事就任から2期目を迎えた桜井正光氏(リコー会長)。2007年からの1期目は「構造改革に対する揺り戻しや金融危機への対応に忙殺された」。2期目は国内外にいっそう多くの課題が山積しているが、長期的視点に立った日本の国家戦略の明確化を促そうと政府への提言を続けている。

--世界的にグローバル資本主義への批判が聞かれます。今般の世界金融危機が及ぼした問題点とは何でしょうか。

金融システムそれ自体が悪いものではない。実業に対して血液を流し込む重要な役割を担っているわけだが、今回は金融商品化というものが独り歩きしてしまった。健全な市場を作り上げる前に、金融の暴走を許してしまった。そこには適切な監視とルールが必要であったと思う。金融が自己完結型になって、暴走した点が問題といえる。

--経済同友会では「この国のかたち」を固めることの重要性を強調していますね。

国がどんな産業や技術を育てていくのかを、明らかにしていかないといけない。麻生首相が低炭素社会ナンバーワンの国にしようというなら、それがビジョンだ。ビジョンを達成するために必要な重要施策が国家戦略になる。その中で太陽光発電に関する具体的な施策を打つべきだ。

日本政府は、05年度に太陽光発電への補助金を一度やめた。が、ヨーロッパが数年前から電力買い取り制度に力を入れ始め、今年就任したオバマ大統領が「グリーン・ニューディール」の理念を掲げだすと、今年になって、日本も2020年に太陽光による発電量を20倍にしよう、と躍起になりだした。こんなのはみっともないことだ。国家戦略で軸に据えた事業をやめたり、再開したりするというのは本来ありえない話だ。

--政府として、国のビジョンを明確にすべきだと。

たとえば政治に関しては地方分権があるべき姿だ。地域住民に近いところから住民サービスのあり方について意見をすくい上げていかないといけない。さらに地域のもう少し上のレベルで産業振興を図り、インフラや安全保障については国が責任を持つ。地方分権を徹底してやっていくと、国と地方の役割に関するゴールが明確化される。

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