日本がモノづくりを捨て別の道を進むことはない--桜井正光・経済同友会代表幹事
また、社会保障の問題では、今は若者と高齢者の間で大きな格差ができて、若者に不公平感が生まれ、これが国民年金などの不払いの原因になっている。このままでは制度の破綻は目に見えている。社会保障制度を持続させるには、国民の負担がかなり大きくなることを覚悟しないといけない。
だから、将来において国民負担率をどれくらいにすれば、年金制度を維持していくことができるのか、制度改革の行き着く先を明らかにしないといけない。今の政党はこれを語っていない。
--総選挙が近づいてきましたが、政治家に求められる資質は。
天下国家を語れる、つまり、日本の大きなビジョンを語れる政治家がいなくなった。これは政治家に限らないが、今日本では内輪の論理が相当多くなってきている。要するに、国内、自分、足元(短期)が大事で、そうした面にばかり関心が向いているようだ。これは、今いちばん深刻な問題といえる。
日本が新しい世界づくりのためにどう役割を果たし、貢献していくのかが求められているとき、政治が内向き、内輪の姿勢では通用しない。これでは、世界から相手にされなくなってしまう。
--世襲議員への批判が起こっていますが、これが日本の政治の停滞をもたらしている原因ですか。
世襲だからダメだ、とは思わない。むしろ問題は今のねじれ国会にある。政治の空白は世襲議員がいるから生じているのではなく、ねじれ国会が問題だと思う。
--日本企業の国際的な成長力、競争力が落ちています。企業も経営構造を見直す時期に来ていますか。
そうでしょうね。2年前、代表幹事に就任したとき「新・日本流経営」という概念を掲げた。今までの高度成長期の古い経営スタイル、すなわち年功序列の賃金制度、系列会社を下請け的に使う硬直化したやり方、そうした日本の旧来的なやり方ではダメだ。一方で、日本の強さ、欧米には負けない日本流の経営の強さというものもある。これを再発見し、日本の強さとして練り直して磨いていくことが大事だ。