日本がモノづくりを捨て別の道を進むことはない--桜井正光・経済同友会代表幹事

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--先ほど「現場力が日本の強さ」と言われました。ただ、いま日本の工場は派遣・請負など、社外の人材、短で従事する人材を使わなければ成り立ちません。それが日本の現場力の蓄積を不可能にしているということはないですか。

そうは思わない。むしろ危惧しているのは、理数系離れにより、現場力のキーマンとなる人の母数が減ってきていることだ。今は高専(高等専門学校)の受験生が非常に減っている。学校数も減っている。高専の人たちは、現場の中で班長さんとか中堅どころになっていて、カイゼンのエンジン役になっている。そういう人たちが減っているというのは、非常に厳しい現実だ。彼らは大企業では中堅だが、中小企業ではマネジメント、技術開発の中枢を担っているわけだ。こうした層は、中国、韓国勢のほうがどんどん厚くなってきている。

--日本のビジョンとして、モノづくりを捨てるという選択肢はないのですか。

それはない。確かに中国の人件費は日本の20分の1だ。だがたとえばリコーの場合、製造原価に占める組み立ての人件費というのは10%くらいしかない。

むしろ大きいのは7割を占める部品、材料の購入費だ。重要な部品は技術的に日本でしか作れないということも多いから、海外で組み立てをするとなると部品を日本から運ばないといけない。そうなれば物流費もかかる。人件費が安いから製造をすべて海外に移すべきとか、そんな単純にはいかない。日本がモノづくりを捨てて別の道を行くことなど考えられない。

さくらい・まさみつ
1942年生まれ。66年リコー入社。リコーUKプロダクツ社長、資材本部長などを経て、93年リコー・ヨーロッパ社長。96年に代表取締役社長に就任。2007年リコー会長に退くとともに、経済同友会にて現職に。

(週刊東洋経済 写真:今井康一)

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