なぜマザーハウスはジュエリーを始めたのか

「外れ値」を見つめる目差しの原点にあるもの

インドネシアで作られているアクセサリー(撮影:今井康一)

「インドネシアのジョグジャカルタの空港から2、3時間、離れた村にいる人は、インターネットもつながらないし、世界のアクセスから除外されていて、地球上ではいわゆる外れ値の人たちです。よくメディアには『社会のために』ということがフォーカスされるけど、私は自分の幼少期の体験から、個人的に彼らのような外れ値の人たちに強いシンパシーを感じてきました。そして、外れ値で生きながらも、世界に通用する技術を持っている人たちを尊敬しています。だから、彼らにスポットライトをあてたいのです」

「シンパシー」という言葉を聞いて、納得がいった。いまでこそ、グローバルで活躍する先駆的な女性起業家として数多くのメディアに取り上げられるようになったが、振り返ってみれば山口自身がつねにアウトサイダーとして生きてきた。途上国の「外れ値の人たち」は、彼女にとって仲間なのだ。

自らの意志でいじめを克服

マザーハウス店内の様子(撮影:今井康一)

いじめが始まったのは、小学校1年生の2学期だった。今でも、はっきりとした理由はわからない。ただ、心当たりはある。「朝礼のときにどうして『前倣え』をしなきゃいけないのか納得いかないし、授業でも同じ答えじゃないといけないということに、すごくストレスを感じていました。そうやって思ったことを発言しているうちに、みんなの輪の中に入れなくなったのです」

自分が、周囲から浮いているという実感はあったが、気持ちを曲げてまで輪の中に入りたいかというと、そうでもない。迎合を拒否した山口に対するいじめは徐々に激しさを増し、間もなく不登校になった。

当時、不登校は社会的に許容されていなかったから、ある人は山口を問題児だといい、ある人は心の病かと疑った。大人からも理解を得られなかった山口は、公園でひたすら絵を描きながら「この白い紙は、すごく自由だな。私みたいな端っこの人間だって生きていたっていいじゃん」と思っていたそうだ。

しかしあるとき、母親が自分の不登校について深く思い悩んでいることを知り、「このままじゃダメなんだ」と改めて学校に足を向けるようになった。最初は1限目だけ、次は2限目までと、自分のなかで課題を設定して、少しずつ学校で過ごす時間を伸ばしていった。そしてついに、終業時間まで学校にいることができるようになった。その達成感は、後の山口の歩みに大きく影響している。

「今まで生きてきた34年間のなかで、いちばん大きな成功体験でした。学校に行けちゃったよ私、こんな自分でもいいんだって。自分のなかの尺度では、ものすごく大きなことでした。それからずっと、外れ値であることの意味や意義を考えるようになりました」

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