「話が通じない」と嘆く人が見落とす"盲点" ANA流伝え方で「言った、言わない」が解決
最初に書かれているのが、最も重要な「なぜこの作業が必要なのか、この作業をしないとどのような影響があるのか」です。例えば「ANAの機体では不具合は起こっていないが、海外他社の機体で不具合の報告があったので、念のため部品を取り替える」といったことです。
30年以上整備部門に在籍し、ANAビジネスソリューションでヒューマンエラー対策講師を務める富田典明は、次のように話します。
「エンジニアリング・オーダーでは、指示内容を感情的な要素なしで伝えます。事実に即してできるだけ具体的に文書で伝えるので正確に伝わります。感情的なメッセージも含まれやすいメールとは違う利点があります」
ANAの整備部門のように会社で決まったフォーマットがなくても、繰り返し使う文書やメールの「型」をつくっておくと、ヌケ・モレがなくなります。
文書やメールを書くときに、自分がどのような感情、どのような気持ちになっているかは、予測不可能です。疲れがたまって集中力を欠いていたとしても、「型」に沿って書けば、最低限のクオリティを保つことができます。また、思いばかりが先走って、発注金額を書き忘れるといったミスもなくすことができます。
「なぜなら」を含めて何度も伝える
何か新しいことを始めようとするとき、何かを変えようとするときは、相手に納得してもらえるように説得する必要があります。しかし、しばしば相手から反発を受けて、「話が通じない」と嘆く結果となります。実はこの場合も、自分の伝え方やコミュニケーションの仕方に原因があることがあります。
人は、何かに納得しようとするとき、「理由」を求めるものです。たとえば、新たな制度が導入されるとき、なぜそれが必要なのかを知ろうとする。会議が延期になったとき、なぜ延期しなければならないのかを知ろうとする……。
その理由をもとに、それで納得できるかどうか判断しようとします。ですから、人に「してほしいこと」を伝えるときには、明確な理由とともに伝えることが大切です。
ANAの整備部門では、2001年に品質保証体制の変更を行いました。これまでの仕事のやり方を変更する改定だったため、現場からは少なからず疑問の声が挙がりました。当時、品質保証部門の説明責任者を務めていた整備士の富田は、次のように振り返ります。
「新たなことをトップダウンで行うとき、ANAでは徹底的に、丁寧に説明する伝統があります。このときも、品質保証部門で2度にわたりパンフレットを作成し、職場説明会を何度も開催しました。同じことを何度も何度も伝えることは、納得してもらうためにも重要です」
理由が伴っている説明は、周囲の人たちの共感を得られやすくなります。「うちの部下(上司)は話が通じない」と嘆く前に、「理由」まで相手に伝わっているかどうかを振り返ってみることが大切です。
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