楽園企業の「ユルくてスゴい」人材育成法 「教育、管理、強制しない」と人は勝手に育つ

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会社が管理や強制(命令)をしないから、社員がなぜか自発的に働くようになる。それが山田式「3ナイ主義」の3番目、「強制しない」主義の秘密だ。

管理主義が全盛の今、理解しづらい人も多いはずだが、これも山田氏の2つの考え方に基づいていた。

「強制しない」主義=「自分で考えて動く社員になれ」

そもそも管理主義には、「本来、人は怠け者だから、会社が仕事を強制しないと誰も頑張って働かない」という前提がある。しかし、「その前提自体が間違っている」というのが山田氏の持論だった。 

(1)「強制しないから、社員は自発的に仕事に取り組むようになる」

山田氏の話だと、会社が管理しすぎるから、社員は会社から命令されたことだけをやるようになるという。理由は簡単で、自分なりに考えて働くより、会社や上司から言われたことだけをやるほうが、社員ははるかにラクだからだ。

一方の未来工業では、「教育しない」や「管理しない」を実践することで、仕事をどんどん社員に任せ、自分なりに考えて働く社員たちを増やしてきた。

「つまり、会社が強制しなくても、『自分で始めた仕事だから完成までこぎつけたい』という責任感が生まれてくるわけや」

(2)「強制しないから、『失敗を恐れない気持ち』が生まれるんや」

未来工業の開発部では、市場シェアが7~8割の人気製品でも、何らかの「改善」に取り組む。もちろん前回製品より売れず、結果として「改悪」になることもある。それでも誰もメゲないと、山田氏は話していた。

「『やってみてダメなら、元に戻せばいい』という前提が、ウチにはあるからや。いったん元に戻して、また考える。会社が強制しないから、『失敗を恐れない気持ち』が生まれる。自発的に働く社員を育てるには、その気持ちが不可欠やからな」

未来工業が、社員に「教育」も「管理」も「強制」もしない理由が、おわかりいただけただろうか? このユル~い感じが、むしろ社員たちの自発性を引き出しているのだ。

それが、山田氏がよく話していた「自分で考え、行動して、自ら検証できるプロ社員」の育成につながる。ひいては、会社の好業績をも生み出していく。

確かに、人は管理されれば窮屈に思い、逆に管理されなくなれば、生真面目な日本人の多くは「自分がしっかりしなければいけない」と考える。山田式「3ナイ主義」は、そんな日本人の生真面目さを知り尽くしたマネジメント方法といえるのだ。

荒川 龍 ルポライター

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あらかわ りゅう / Ryu Arakawa

1963年、大阪府生まれ。『PRESIDENT Online』『潮』『AERA』などで執筆中。著書『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社)は2007年にNHKドラマ『スロースタート』の原案となった。ほかの著書に『自分を生きる働き方』(学芸出版社刊)『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書)などがある。

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