安田菜津紀、未来に綴る手紙のような写真を 「家族とは?」という疑問を持ち続けた思春期

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安田菜津紀/フォトジャーナリスト。2011年から2015年にかけて、岩手県陸前高田市での祭や漁の再開など、冬の営みにテーマを絞った写真とともに

シリアの難民キャンプで撮影した写真がCDジャケットに

当記事は「GQ JAPAN」(コンデナスト・ジャパン)の提供記事です

シリア難民のキャンプなどで子どもたちを、震災後の岩手県陸前高田市で復興に向けて日々を暮らす人々を撮影してきたフォトジャーナリストの安田菜津紀。最近は、映画『スワロウテイル』から約20年ぶりに再結成したYEN TOWN BANDが2015年12月2日にリリースしたシングル『アイノネ』のCDジャケットに、シリア難民のキャンプで撮影した写真が使用された。

あるテレビ番組に出演した安田菜津紀は、シリア難民の話をしながら撮影した写真を何点か見せる機会があった。その番組を目にした映画監督の岩井俊二から、安田のもとにツイッターでメッセージが届いた。『スワロウテイル』に登場したYEN TOWN BANDが再結成して新曲をリリースするので、CDのジャケット写真として難民キャンプで撮影した写真を使わせてほしい、という打診だった。

「ほぼリアルタイムで『スワロウテイル』の映画を見ていましたし、登場するのは拠る国のない人たちです。その映画から20年近く経ち、彼らが今をどう生きているのか、その姿勢が前を向こうと葛藤を続けるシリア難民たちと重なると感じたのです」 1996年に公開された映画『スワロウテイル』では、「日本円」が強かったある時代、一攫千金を求めて各国からやってくる労働者たちを描かれた。その彼らは日本のことを「円都(YEN TOWN)」と、日本人たちは住みついた不法外国人労働者を「円盗(YEN TOWN)」と呼んだ。無国籍な世界観が岩井俊二の手でフィルムに焼き付けられ、主人公のグリコを演じたシンガーのCharaがYEN TOWN BANDのボーカルを務めた。プロデューサーの小林武史が手がけたサウンドトラックは当時大ヒット。そして2015年夏、越後妻有トリエンナーレでYEN TOWN BANDが再結成ライブを行い、12月に新曲『アイノネ』をリリースしたのだ。

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