安田菜津紀、未来に綴る手紙のような写真を 「家族とは?」という疑問を持ち続けた思春期

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「岩井さんは、CDのブックレットに私が撮影した内戦前のシリアの写真も使用してくださいました。美しい国を生きてきたシリアの人々の過去があって、困難な内戦の先をどう生きようとするのか、彼らは難民キャンプで可能性や希望を失うまいとしていることが、その両方の写真によって伝わるはずだと考えています。『アイノネ』には、とても優しいメッセージが込められているので、音楽と写真の表現がクロスオーバーして広がってくれる手応えを感じています」

どういうきっかけで、彼女はフォトジャーナリストという職業を選ぶようになったのだろうか。高校2年の夏に、「国境なき子どもたち」友情レポーターとして、カンボジアに10日間滞在したことが大きかったのだという。しかし当時から報道写真への興味が大きかったわけではなく、そのカンボジア滞在でも、参加後のレポートのためにインスタントカメラで撮影をしただけだった。

「家族とは?」という疑問を持ち続けた思春期

安田は中学生のころに父親と兄を亡くした。立て続けに家族を失い、「人と人とがつながるとはどういうことなのだろう?」と、日常的に考えるようになった。そして高校の教師から「国境なき子どもたち」としてカンボジアへのツアーに参加するプロジェクトの話を聞き、「路上生活を続け、学校に通えない子どもたちと触れ合うことで、何か自分なりの答えが見つかるのかもしれない」と思い至った。「最初はそんな自分本位な気持ちだった」と振り返る。

訪れた先は、カンボジアの青少年の自立を支援する施設。15歳を超えた子たちを対象に、自立して生活できるスキルを身につけてもらうための施設だ。人身売買の経験にあって保護された子どもたちもおり、彼らと触れ合うことは「すべてが想像を超えすぎていた」。

「カンボジアでの10日間は、最初から最後までほぼ全部をはっきりと思い出せるぐらい克明に記憶として残っています。同じ世代の子たちばかりなので、『あの子かっこいいね』とか些細な話をしたりもしたんですが、みんなの過去を聞くと本当に壮絶なんです。でもみんなは、それに対して『つらい』ではなく、『自分は保護された環境にいるけど、離れている家族は食べるものもない』『家族を食べさせるために、ここで覚えたことを早く役立てたい』と、『家族』という言葉がまず出てくるんです。私は自分のことだけしか考えていなかったことに気づかされました」

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