穴だらけの障害者福祉政策 小幅修正にとどまる自立支援法「改正」
「障害者の自立支援」を掲げながら、福祉施設へ通ったり、自宅で介護サービスを受ける際に、障害者に過大な利用料を課したことが社会問題となった障害者自立支援法--。同法が施行された2006年4月以降、年収80万円足らずの低所得の障害者(障害基礎年金2級の受給者)が、ホームヘルプサービス(介護や生活援助)の利用で年間18万円もの自己負担を強いられる実態が判明した。また、授産施設に通う場合でも、工賃を上回る施設の利用料や昼食代を徴収される人が相次いだ。
そうした中で、負担の急増に耐えられなくなった障害者が授産施設に通うのをやめたり、生活苦を理由にした障害者の心中事件も多発。障害者施設の経営も悪化し、賃金引き下げや職員の離職も相次いだ。
自立支援法は、食事や移動、排せつなどへの支援を「受益」と見なし、自己負担を課すという仕組みだ。しかも、障害が重く、利用するサービスの量が多いほど、負担が大きくなる。厚生労働省が介護保険との統合を狙って制度設計をしたこともあり、1割負担など共通の仕組みが少なくない。介護保険との統合は障害者の反対で頓挫したが、定率負担など根幹の仕組みは維持されてきた。
その自立支援法改正法案が閣議決定され、3月31日に国会に提出された。制定自体が強い反対に遭った中、自立支援法の附則で3年後の見直しが盛り込まれたためだ。改正法案では、「制度全般についての見直し」がうたわれ、自己負担のあり方を、「家計の負担能力に応じたものとすることを原則とする」と明記された。この「応能負担」原則への転換を理由に、「抜本的見直しだ」と与党はアピールしたが、改正法案の内容は現状追認の点が多い。
「自立支援法はいったん廃止の方向を打ち出し、障害者福祉の理念に立ち返って再出発すべき」(藤井克徳・日本障害者協議会常務理事)との意見も少なくない。
改正法案の内容を点検していこう。法改正の最大のポイントとされたのが応能負担への見直しだ。