穴だらけの障害者福祉政策 小幅修正にとどまる自立支援法「改正」
年収の1割の負担も
06年4月の自立支援法施行により、1割の利用者負担が導入されたが、冒頭のような障害者の生活上の問題が噴出したことで、政府与党はすでに施行から1年も経たないうちに「抜本的見直し」に迫られた。
06年12月の「特別対策」および翌07年12年の「緊急措置」によって、低所得者向けに大幅な軽減が図られた。たとえば住民税非課税の場合、負担上限額は当初の8分の1ないし10分の1に引き下げられた。そして、今回の法改正では、これまでの引き下げを追認し、法律上も能力に応じた負担が原則だと明記された。
もっとも、自立支援法施行前と比べた場合、年収80万円弱の低所得者の施設利用の際の食費や送迎費は月に5000~6000円も増加している。これに施設利用料を加えた出費は、自立支援法改正前と比べて6000~7000円の増加。障害基礎年金(2級年金)6万6008円の1割に相当する。
施設の経営悪化を引き起こした利用料の日額払い計算方式での徴収の仕組み(自立支援法以前は月当たりの定額払い)も骨格はそのままだ。知的障害者や精神障害者は、体調を理由に通所を休むことも少なくないが、日額払い方式の場合は施設の減収につながる。特別対策などで一定水準まで収入が保障されたものの、施設が受けた打撃は小さくない。
改正法案で相談支援体制の強化やグループホームなどの入居者への入居費用の助成が盛り込まれたのも前進だ。しかし、民間アパート居住への家賃補助はなく、障害者が地域で生活することは依然として難しい。
また、自立支援法以前に約6000カ所近くあり、約9万人の障害者が利用していた無認可の小規模作業所は、自立支援法施行により、法定施設への移行の道筋がつけられた。しかし、運営費が十分に保障されていないことから、法定施設に移行したものの運営が困難になったり、定員などがハードルになり、移行できずに存続が危ぶまれる作業所も少なくない。今回の改正法案でどこまで問題が改善されるかも不透明だ。
懸案だった「障害者の範囲」の見直しでは、発達障害が障害者の範囲に含まれることが改正法案で明記された。その一方で、難病を持つ人の多くが障害者の範囲に含まれず、支援を受けることができないままだ。