穴だらけの障害者福祉政策 小幅修正にとどまる自立支援法「改正」

大きな課題である所得保障についても、障害年金の水準引き上げは財源確保が困難であることを理由に、将来の課題として先送りされた。

所得保障が不十分な一方、過大な負担を課す自立支援法は憲法第13条(幸福追求権)および第25条(生存権)に反しているとして、5月20日までに62人の障害者が全国8カ所の裁判所に提訴している。

手薄な障害者福祉と貧困

あまり知られていないが、日本の障害者関連予算は先進国でも際立って低い水準だ。対GDP比での障害者分野の社会支出はスウェーデンの約8分の1、米国の約2分の1にとどまる。「障害者の範囲が狭い一方、年金の対象者が少なく、水準も低いためだ。就労や社会参加の場が少ないことも一因だ」(尾上浩二・DPI日本会議事務局長)。

日本社会事業大学の佐藤久夫教授(障害者福祉)は、「障害者はごく一部の特別な存在であるとの日本人の障害者観は、そうした障害者観に基づく政策の反映だ」と指摘する。

実は、障害者自立支援法の見直しは、障害者観や障害者福祉政策の抜本的転換の好機だ。というのも、自立支援法施行から1年半後の07年9月、わが国は障害者権利条約に署名し、抜本的な権利保障の拡充を世界に向けて公約したからだ。障害者権利条約は、従来の医学的な観点とは異なり、障害は社会との関係性において生じると見なしている。そして障害のある人が障害のない人と同じように権利を保障されるための「合理的配慮」がなされていることを、条約は締結国に義務づけている。政府与党は、障害者自立支援法を見直す際、障害者権利条約の趣旨をしっかりと受け止め、抜本的な改正を視野に入れるべきだった。

障害は貧困とも深くつながっている。生活保護を打ち切られ、07年6月に「おにぎりが食べたい」と書き残して亡くなった北九州市の男性は、肝臓に障害があり、寝たきりの生活だった。しかし、肝機能障害は障害者手帳の交付対象でないため、障害者福祉サービスを受けることができなかった。今年4月に東京都内で開催された「派遣村」相談会でも、来場相談した124人のうち47人が疾病や障害を持っていたが、障害者手帳の所持はわずか5人だったという。これは、障害者福祉のセーフティネットが機能していないことを意味する。制度のあり方は再検討を迫られている。

(岡田広行 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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