今の日本は敗戦間近の1940年に似ているのかもしれない《若手記者・スタンフォード留学記 37》
いわゆる"司馬史観"への疑問
日本の近現代史について勉強すると、「1920年から敗戦まで」の歴史と、「1990年から今日まで」の歴史があまりにも似ていることに驚かされます。
第17回目でも触れましたが、現代の衰退論を語るとき、しばしば耳にするのは「近代史40年周期説」です。いわゆる、司馬史観と言い換えてもいいかもしれません。
作家・半藤一利氏の『昭和史』(文藝春秋)によると、その意味するところはこうです。
1868年の明治維新以来、近代化に励んできた日本人は、その約40年後、日露戦争の勝利によって、世界史的な金字塔を打ち立てた。だが、そこから転落の時代に突入し、40年後には敗戦という形で破滅を迎えた。
ただ、戦後、日本は焼け野原から蘇り、約40年後の1989年には日本の株価は最高値を更新した。しかし、バブル崩壊を経て、そこから日本は再び滅びの40年へと突入してしまった。このサイクルどおりに進めば、日本は2030年まで右肩下がりを続けていくことになる…
ただ、この40年周期説には、いくぶん疑問が残ります。
司馬史観に代表される「日露戦争をピークに日本は坂道を転げ落ちはじめた」というストーリーは、やや単純すぎるように思えるのです。
司馬遼太郎氏は、日本人の精神的な崇高さ、そして日本人が国民の力を結集したピークとして、日露戦争をあげているのでしょう。
しかし、軍事、経済を総合した日本の国力という点では、日露戦争後も日本は上昇気流に乗っていました。
経済面では、日露戦争後に不況に襲われたものの、第一次世界大戦が日本に未曾有の好況をもたらしました。たとえば、著名な経済史家、アンガス・マディソン、グローニンゲン大学教授の推計によると、日本のGDPは、1904年から1919年の15年間でほぼ2倍に伸びています。