今の日本は敗戦間近の1940年に似ているのかもしれない《若手記者・スタンフォード留学記 37》
屈辱的な敗北から、新たな歴史のサイクルが始まる
もちろん、歴史のサイクルは単純には繰り返しません。ただし、大きな流れとしては、今回も戦前と同じ波動を描くはずです。今の下り坂のトレンドは容易には食い止められないでしょうし、急激な国力のV字回復は望めません。
むしろ、新たな歴史のサイクルを起動するためにも、早めに決定的な敗北を味わったほうがいいのではないでしょうか。早めに、もうこのままではダメだというコンセンサスが国民に定着したほうがいい。日本が民主主義社会である以上、大きな変革を行うには、世論の熟成が不可欠なのですから。
実際、1980年代以降、ずるずる問題を先送りしてきましたが、もう本当にこのままではジリ貧だということに、日本人全体が気づき始めたように感じます。
失われた10年は、戦後日本人の自信を打ち砕きました。米国発金融危機に伴うマイナス成長は、2002年以後の成長が幻であったことを証明しました。そして、自民党の混乱と官僚の失策は、戦後の統治モデルがもはや機能しないことを明らかにしました。
そこにGDPの日中逆転が起きれば、さすがに変化への欲求が爆発するでしょう。そうした反転攻勢が2014年前後に訪れれば御の字です。
今後10年に渡り、日本が戦うのは退却戦です。
早めに、もう勝ち目のない今の戦いから、すみやかに退却を行い、国づくりに励む。新たな戦略、新たな国のかたちの下、国の基礎を固め、再出発への準備を整える。それが今後10年の日本の進むべき道です。
衰退の季節を歯を食いしばってしのげば、負のサイクルを早めに切り上げ、新たな歴史のサイクルを起動することができます。退却戦をうまく完遂できれば、2010年代後半、遅くとも、2020年代前半から、新生日本が、新たな上昇サイクルへと突入することができるでしょう。