今の日本は敗戦間近の1940年に似ているのかもしれない《若手記者・スタンフォード留学記 37》
GDP日中逆転という、新たな敗戦
では、約5年後の日本に降りかかる、"新たな敗戦"とは何でしょうか?
私は、中国にGDPで世界第2位の座、アジア最大の経済大国の座を奪われることだろうと思います。現在のペースが続けば、あと5年後、ちょうど2014年前後に、GDPの日中逆転が起きるでしょう。
たしかに、この負けは、太平洋戦争における敗北に比べれば、破滅的ではありません。命を奪われるわけでなし、飯が食えなくなるわけでなし、普段の生活は何も変わりません。敗戦を経験された方は、「この程度の不況、苦境を敗戦にたとえるのは、おおげさだ、不謹慎だ」と言われるかもしれません。
たかが、GDPということなかれ。この敗戦は、精神・内面に深く突き刺さります。
経済力という、戦後の日本人が身を粉にしてささげてきた、その目標において、わずか20年前には、GDPが日本の8分の1しかなかった隣国に逆転されるのですから。
「そうはいっても、中国の一人当たりGDPは日本の10分の1でしょ」と言われるかもしれません。その指摘自体は正しい。それでも、負けは負けです。
戦前の日本は、主に軍事面での一等国を目指し、それを達成したと思った後、太平洋戦争でアメリカに打ちのめされました。
戦後の日本は、経済面での一等国を目指し、それを達成したと思った後、その差は大きいと思っていた中国に追い抜かれる。それは静かな敗北ですが、大きな敗北です。経済をアイデンティティーとしてきた戦後日本にとって、決定的な敗北であると言っていい。