NTTの光拡大戦略、2000万回線計画死守は得策か
利益急減に大赤字転落など絶不調の企業決算が続出する中、NTTは2009年3月期で約1兆1100億円(前年度比1949億円減)の営業利益を計上。結果、金額では日本一に躍り出た。
しかし、三浦惺社長は「日本一といっても実態は減収減益で相対的なもの。環境の厳しさを踏まえ気を引き締めている」と淡々。10年3月期は音声収入の落ち込みなどで連続減収となるが、コスト削減によって利益の減少を食い止める計画で、当然、不況の風と無縁ではいられない。
今回の業績発表で注目を集めたのは、同社が注力する固定系の光ファイバー回線サービス(FTTH)「フレッツ光」の契約数だった。期中に下方修正を余儀なくされた結果、通年度の純増数は235万(期末契約数は1113万)。10年3月期の純増目標は250万を掲げている。しかしこのペースでは、かねて掲げている11年3月期末に累計2000万獲得という目標の実現が困難だ。目標値の引き下げも予想されたが、「できるだけ早期に2000万を達成したい」(三浦社長)と言うにとどまり、事実上、達成時期の延期となった。
FTTHが伸び悩んでいるのには複数の要因がある。景気悪化の影響もあり、従来の電話線(メタル回線)を利用した低価格のADSLがしぶとく健闘している。また、開通工事が必要な固定系回線の煩わしさを嫌い、通信データカードなどで無線インターネットを楽しむ人も増えている。
だが、レガシー系といわれる従来のメタル回線から光回線へのシフトは、NTTグループにとって重いインフラコストを減らすうえでも必要不可欠な方策。そのため映像サービスの拡大や、開拓が難しかった中古マンションにも適した光配線方式を展開するなど、契約数の拡大に必死だ。
計画どおりの2000万契約達成が難しい中、11年度(12年3月期)に光サービス単年度黒字化という、もう一つの目標も据え置いた。工事費や販促費の効率化、解約率抑制を図り、何とか黒字化を果たそうとしている。
今年度に掲げた純増目標250万もたやすい数字ではない。契約数の「大目標」は実態に即したものに見直し、あらためて拡大方策とコストのバランスを考えたほうが、むしろ効率的ではないのか。
(撮影:大澤 誠 =週刊東洋経済)
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