博士にまでなったのに、なぜ報われないのか

当事者に聞く「ポスドク問題」の根深さ

「少年よ大志を抱け」と日本人学生を励ましたクラーク博士の銅像。しかし、大志を打ち砕かれて途方に暮れているドクターが数多くいる(写真:風見鶏 / PIXTA)
昔は優秀で勉強熱心な人を「末は博士か大臣か」と評した。現在はいずれの肩書きも神通力を落としている。特に技術者については、博士号の取得後、期間の限られた研究に従事する博士研究員(Postdoctoral Fellow、ポスドク)が増え、大学の教員にもなれず企業への就職もできないという問題がクローズアップされている。
これは、1995年に科学技術立国を目指す法律が施行されて博士号が量産される一方で、その後の少子高齢化による大学のポスト不足と、景気低迷に伴う企業の研究開発費削減によりミスマッチが拡大したためだ。しかし、嘆いていても始まらない。当事者3人の生き様から、ポスドク問題の実態と解決策を考える。

「大学には余裕も意思もない」

「40代になってもポスドクのままではいたくない。そろそろ企業に就職しなくては」と語るのは、東京大学柏キャンパスの客員共同研究員、Aさん(32)。別の大学の応用物理工学科在学中に核融合を原子力発電に生かす研究に携わり、卒業後は東京に本社を置く計測装置のメーカーに就職。しかし、「エネルギーを作るのは面白い」との思いから、1年で辞めて東大の大学院に入った。

東大の客員共同研究員のAさん

奨学金を受けて研究を続け、2014年6月に博士号を取得。その後、九州の大学から共同研究に誘われたが、予算がつかず話が流れた。昨年3月には「大学側には研究資金やポストを増やす余裕がなく、増やそうともしていない」と実感して大学に残るのを断念。就職先が巨大企業に限られる原子力部門にはこだわらず、計測関連やプログラミングなどの業界に絞って働き口を探してきた。

現在、1日の大半は就職活動に費やしている。応募した企業数は「覚えていない」が、面接を受けただけで20社近くに上る。企業の担当者や転職エージェントには「アカデミックに寄りすぎている」と言われることが多いという。

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