博士にまでなったのに、なぜ報われないのか 当事者に聞く「ポスドク問題」の根深さ

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Bさんはコスト感覚もしっかりしている。「私のやっている研究はあまり資金がかからず、初期投資は数十万円程度で済む。申請が通れば、つくばにある実験施設も無料で使える。一番金かかるのは核酸のサンプルで、2ミリグラムが10万円だったりするが、これもなんとかなる」。

企業に就職できなかった場合にはどうするのだろうか。「ポスドクをやるならば海外に出て、研鑽を積みたい」。仮に研究を続けられなかったとしても、英語に習熟すれば何らかの道は開けるというわけだ。そうした回り道をしたとしても「最終的には自分の考える研究をしたい」と、遠くを見据える。まだ若いが、逆風を自身の強さに変えていこうとする強い意思を感じた。

元祖ポスドクの「仕掛人」

最後に紹介するのはポスドクの元祖のような存在。自身の経験や人脈を生かして、ポスドクを支援する事業を手がけている人物だ。

「元祖ポスドク」の倉本氏

倉本秀治氏は山口県出身の47歳。1997年に九州工業大学で情報工学の博士号を取得。文部省(現文部科学省)や科学技術庁(同)で原子物理学を研究したがアカデミズムへの道を断念。現在のAさんと同じ32歳の時に日立製作所に移り、その後はトヨタ自動車やサムスン日本研究所で働いた。現在は人材紹介などを手がける企業クリーク・アンド・リバー(C&R)で、プロフェッサー事業部の部長としてポスドクの就職支援を行っている。

倉本氏は、ポスドク問題の背景には、大きく2つの要因があると語る。

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