防衛補正予算1966億円の買い物リストを検証 ヘリ、装甲車などの装備を買おうとしている

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US-2は昨年訓練中の事故で破損し、1機が喪失されたものであり、これも本予算で調達すべきものである。本来US-2にしても海幕での見積もりでは、損耗を見込んで計画が立てられているはずだ。

例えばUS-2の前の救難飛行艇であるUS-1/US-1Aは総機数の約1/3が事故で失われている。飛行艇は一般の航空機に比べて、損耗が多い。それを考えればUS-2も損耗が多いことは十分に想定できる。

訓練中の事故で損失したものを災害救助で必要だから要求する、というのは筋違いのようにみえる。もともと救難飛行艇は本来哨戒機P-3CやP-1などのクルーの救助を目的として整備されているもので、それ以外の民間などの救助は副次的な任務である。

装甲車に関していえば来年度の概算要求で96式装甲車は8輌、NBC偵察車1輌が要求されていたが、政府案ではこれらの調達はゼロとされた。そして今回の補正予算では96式装甲車は8輌、NBC偵察車1輌が要求されている。まさに概算要求で落とされたものを補正予算で調達している。

軽装甲機動車は概算要求で軽装甲機動車は6輌の要求が政府案ではゼロとされ、補正予算ではなんと来年度概算予算の6倍以上の38輌が要求されている。これだけの軽装甲機動車が災害出動で損耗したとでも言うのだろうか。また軽装甲機動車がどれほど、「災害対処能力の向上等に必要」なのだろうか。

本予算に組み込むべきものばかり

さらに、「自衛隊の安定的な運用態勢の確保」として526億円が要求されている。

・航空機(OP-3C・EP-3)搭載電子機器部品等の調達等
・情報収集体制の整備
・その他、「テロ対応のための経費として41億円(戦闘装着セット、個人用装備品等の調達)を含む」

 

これらは「厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、自衛隊による活動が増加傾向にあることに伴い、警戒監視態勢の強化、テロ等各種事態への対処能力の向上、装備品の可動の確保等、自衛隊の安定的な運用態勢の確保に必要な経費を確保」のため、とされている。こうした予算は、まさしく本予算で要求すべきものである。

さらに「防衛施設の円滑な運営の確保等」として403億円が要求されている。これらは「再編関連措置のうち地元の負担軽減に資する措置等を的確かつ迅速に実施するための経費」とされており、以下の項目が挙げられている。

・厚木飛行場から岩国飛行場への空母艦載機の移駐に伴う施設整備
・キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の返還に伴う物件撤去等
・嘉手納飛行場における海軍駐機場の移転に伴う施設整備

 

これらの米軍関連の費用も本年度中に急に決定されたものでも、急に支出が必要になったものでもない。防衛費の本予算から支払うべきものだ。

次ページ以前から5兆円を超えている
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