「4K番組は録画禁止」という驚愕のシナリオ 民放5社が密室で主張していることとは?
民放側は”複製不可”とすることで、優良なコンテンツを安価に調達可能になり、それが視聴者の利点にもなると主張している。
とはいえ、放送局側が一方的に運用を変更した過去の事例や、番組ごとに異なる運用などは行えないと突っぱねていたことを考えれば、”柔軟な運用を行うために導入すべき”とする意見には説得力がないと言わざるを得ない。
あるいは民放側にも消費者を納得させられるだけの、相応な理由があるのかもしれない。しかし、消費者の使い勝手やライフスタイルに影響を与えるような重大な決定について、放送コンテンツに関して大きな影響力を持つ5局が密室で一方的なルール決めを行うことは、独禁法上の懸念も考えられる。
独占禁止法8条4号は事業者団体が構成事業者の機能又は活動を不当に制限することを禁止しており、公正取引員会は「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」において、「商品又は役務の種類、品質、規格等は、事業者間の競争の手段となり得るものであり、事業者団体がこれを制限することにより競争を阻害すること」は、これに違反するとしている。
オープンな場で議論されるべき
中島・宮本・溝口法律事務所の中島章智弁護士は「"複製禁止”の運用が実質的に『放送局の事業者団体による放送の種類、品質、規格等の制限』に当たる場合には、独占禁止法に違反する可能性がある。このような疑いを持たれないためにも、NexTV-F内のみの議題とするのではなく、オープンな場で議論されるべきだろう」と話す。
中島弁護士の見解にあるように、一般社団法人であるNexTV-F内だけの議論であるなら、特定の事業者団体による活動とは認められず、独禁法には抵触しないと解釈される可能性もある。しかしながら、実質的に事業者団体として標準規格に制限を加えようとしているのであれば、批判の対象と言わざるを得ない。公共の電波を用いた放送事業の運用ルールであることを踏まえると、視聴者不在の密室でルールが決まる事への違和感は拭えない。
しかし、なぜここまで民放は”複製禁止”にこだわるのだろうか。タイムシフトという行為が、ごく当たり前と言えるほど定着している中、複製禁止を強行すれば不評を買うことはわかっているだろう。
それでも頑なになっている理由は、同時に提案されているもうひとつの案件が絡んでいるかもしれない。もうひとつの提案とは、蓄積・記録されたコンテンツの再生制御についての提案である。
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