「ホンダが航空機産業の文化を変える」 ホンダ エアクラフト カンパニー社長に聞く

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「ほかと同じような飛行機を造って単にシェアを奪い合うのでは成長が見込めない」と話した藤野道格(みちまさ)社長
小型のビジネスジェット機を日本で初披露したホンダ。すでに欧米の企業経営者や富裕層を中心に100機以上を受注しており、FAA(米連邦航空局)からの最終の型式認証を取得次第、顧客への納入が始まる。
ホンダが航空機の研究開発を始めたのは1986年。実に29年をかけて、市場参入というスタートラインに立とうとしている。ホンダジェットの”生みの親”とされるのが米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニーの藤野道格社長(54)だ。
入社3年目に始まった航空機の研究開発プロジェクトに参画して以来、一貫して航空分野に取り組み、困難な道を切り開いてきた。初公開に合わせて日本に帰国した藤野社長に、事業化を直前に控えた思いを聞いた。

 

――今回は「ホンダジェット」のお披露目だけでなく、顧客向けの試乗会を開きました。反応はどうでしたか?

乗られたお客さんは既に既存のビジネスジェットを持っている方なので、まず乗った瞬間に「もう全然広いな」と。飛行中は「圧倒的に静かで、まったく想像していた以上だ」というコメントがあった。パイロットの方も乗られたが、「燃料消費量が圧倒的に少ないし、この高度でこのスピードは想像以上だ」とも言われた。

――受注の大半が欧米ですが、日本市場に参入する可能性は。

市場に入るとなると、最初に売るだけではなく、毎年ある一定の数が売れて市場が回り、サービスや部品の供給をしていく形がいちばんいい。慎重にいく必要がある。

――機体を披露した4月23日の会見では、「航空産業のカルチャーを変える」と話されました。

今のビジネスジェット機は基本設計がかなり古いものが多い。どちらかといえば、使い方もあまり燃費にこだわっていない。極端に言うと、1人で飛んでいるのにすごい大きいジェットを使っているイメージがあった。

適材適所で使い道を絞る

羽田空港の格納庫で披露された「ホンダジェット」

大半の移動距離は1000~1500キロメートルなので、大陸を横断するようなジェットを毎回飛ばすのは効率が悪い。適材適所で使い道をきちんと絞ったジェットを市場に投入すれば、今の米国の航空産業のカルチャーを変えるきっかけになる。そうすれば、新しいメーカーが参入した意味があると思う。

同じような飛行機を造って単にシェアを奪い合うのでは成長が見込めない。だが、新しいジェットのコンセプトでいろんな人が使い始めれば、市場のパイ自体が広がると思う。そして新しい産業をつくっていく。もっとパイロットが必要になり、部品メーカーも広がるだろうし、大きなビジョンの中の一つにホンダジェットがあればいい。

米国では、自分で起業してビジネスジェットを買った人は、中小企業であれば社員を連れて自ら操縦してビジネスミーティングに行く。あるいは、南部に複数のフランチャイズ店を持っていたら、1日で全部回ったりする。取引先を複数で訪問する場合、民間のエアラインだと宿泊が必要でも、全員がビジネスジェットに乗って訪問し、当日に返ってくれば効率はものすごく上がるはずだ。

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