「ホンダが航空機産業の文化を変える」 ホンダ エアクラフト カンパニー社長に聞く

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ふじの・みちまさ●1960年生まれ。84年東京大学工学部航空学科卒業、本田技研工業入社。86年から飛行機開発に携わり、97年にプロジェクトリーダーに。2006年からホンダ エアクラフト カンパニー社長。09年にホンダ執行役員に就任

そのためには燃費の良さや、メンテナンスコストをいかに下げるかが重要になる。ホンダジェットのように競合機よりも15%燃費が良いと、ダイレクトに運航コストが下がる。

機体価格が比較的安いということで、量産効果が出てくれば、製造コストがさらに下がる。さらにたくさんの人が使うことでコストがより下がるというところまで何とかたどり着きたい。

――発表会の時、受注機数を言わなくてもホンダジェットは売れていくとも話していました。

もちろん受注数はある一つのプロジェクトを立ち上げるためのナンバーだが、必ずしも受注数が多いから成功するわけでもない。例えば(経営破綻したベンチャー企業の)エクリプス社の受注が何千機といっても実際、本当のオーダーなのかと。数を誇示してPRに使っていたが、ホンダジェットは商品力があるのでそうしたことをする必要がない。

だいたい2年ぐらいのバックログ(受注残)を常に持ち続ければ大丈夫だろうし、それ以上のオーダーがたくさんある。当初の予定より何倍も多い受注を頂いているが、受注を1000機、2000機にする必要はまったくないと思っている。確実に立ち上げて、一定数を毎年きちんと売っていけば、次につながるだろう。

いろんな戦略を打つ必要がある

「ホンダジェット」を皮切りに、モデルを増やしていくことも競争上は必要に

――2008年の週刊東洋経済のインタビューでは、「ひとつ商品で会社が一生成り立つということは絶対にない」と。

皆が競争しているから、どんな商品だろうと、どんなプロダクトだろうと、ひとつ開発して未来永劫売れることはないと思う。ホンダジェットは圧倒的に性能も良く、燃費もいいが、ライバルメーカーがそのままずっと見ているはずがなく、いろんな戦略を打ってくるだろう。こちらも、さまざまな戦略を展開する必要があり、ホンダジェットができたからといって、そのままというわけにもいかない。

――プロダクトの展開に加えて、メンテナンスやサービスの構築も欠かせません。

そこが重要であると同時に、必ずしも今の既存のメーカーは車並みになっていないと見ている。補修部品がなかなか来ないとか。修理費用が高いとか。価格が十分にリーズナブルなのかというと、必ずしもそうではないと思う。ホンダではある程度リーズナブルにサービスを提供していく。

米国の会社だと四半期(3か月)ベースで赤字、黒字になる。あるいは、自分の任期の間にパフォーマンスを最大限に持って行こうとすると、後はぺんぺん草も生えなくなることもよくある。

ホンダだけではなく日本の企業は、どちらかといえば経営を長期的に見る。今のお客さんをケアすることが将来もっと重要なビジネスにつながるといった長期的な視点があると思う。そのあたりは、ホンダが航空機産業に入っていく上で強みになるだろう。

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