――アイドルに対する偏見もあるのでしょうか。
結局、現在の映画の動員を支えているのは女性や子どもたちなんですよ。普段忙しくしているおじさんたちは、なかなか映画を見る時間がない。だから、彼女たちの方が目利きということも言えますし、おじさんたちが映画を見ないというのも非常に問題だなとは思うわけですが。
ただ、先ほども言いましたが、今回はアイドルが主役という意識はない。中島裕翔はHey! Say! JUMPの一員ではありますが、クレジットではHey! Say! JUMPという肩書は外していますからね。それから原作を書いた加藤シゲアキもNEWSというグループにいるけども、そうじゃなくて、イチ作家です。そこに目を向けてもらえると、映画の出来や、映画に対する思いも違って見えてくるかなと思います。
この映画はどちらかというと、予算をかけずに、なるべくミニマムな形で青春映画を撮ろうという企画だったので、自由にやらせてもらえた。
その自由の中で、現役でアイドルをやっている中島裕翔を完全にイチ俳優として預けてもらった。何の妥協もない。下手すると、普通の俳優さんの方がこういうシーンをやめてくれと言われてしまうことが多いくらいです。そういう意味では、この作品を勝負作にしたいという強い気持ちがジャニーズ事務所側にもある。
中島裕翔が俳優としてどれくらいブレークできるのか。彼は非常に高いポテンシャルを持っているわけだから、そのポテンシャルをどう生かすかというのはあった。ただ、彼を含めて、今回はキャスティングがうまくいった。中島裕翔以外も、今の日本映画の若手でもかなり優秀なメンバーが集まったので、そういった点でも楽しめる映画になったと思う。
62分後になにが起きるのか
――「幕開けから62分後の衝撃」の仕掛けが話題となっていますが。
宣伝上、「仕掛け」と表現していますが、僕自身は「仕掛け」ということはまったく考えていなくて。基本的に、あの原作小説を語るうえで、どういう形なら観客がいちばん気持ちよく、その世界観にのめり込むことができるかを考えた結果です。
だからまずは原作小説が何を訴えようとしているのか。それを読み取ることが監督なりプロデューサーなりの仕事だと思います。特に加藤シゲアキくんの小説は、時勢を入れ替えてというような、すごく映画的な時間のフィードバックがある。映画のモンタージュでしかできなかったことを、あえて小説でやってみようと。それが彼の中でしっくりくるということだと思います。
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