「リトルプリンス」は大人こそ見るべきだ オズボーン監督が語る「星の王子さま」の本質

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「星の王子さま」のその後を描く物語©2015 LPPTV – LITTLE PRINCESS – ON ENT – ORANGE STUDIO - M6 FILMS – LUCKY RED
1943年に出版されて以来、270以上の言語・方言に訳され、1億4500万部以上を売り上げてきたサン=テグジュペリ不朽の名作「星の王子さま」。これまでオーソン・ウェルズやウォルト・ディズニーといった伝説的なアーティストたちが映画化を試み、いずれも実現には至らなかったが、出版から72年目にして初のアニメーション映画として映像化された。それが、『リトルプリンス 星の王子さまと私』のタイトルで全国公開中となっている作品だ。同作はサン=テグジュペリ エステート(権利管理者)が初めて認可した「星の王子さま」のその後を描く物語となっている。
世界中で愛され、大切にされてきた作品をいかにして長編アニメーションにするか。アカデミー賞のノミネート作品、『カンフー・パンダ』で注目を集めたマーク・オズボーン監督が出した答えは「原作を膨らませるのではなく、包み込む」ことだった。老飛行士が語り、女の子が想像する「星の王子さまの世界」は原作のままに誰もが知る挿絵のイメージを最大限に生かす。そして手触り感の残るストップモーション・アニメーションで原作の詩情や美しさを完璧に再現。一方、女の子と老飛行士が住む「現実の世界」は、臨場感のあるCGアニメーションで構築。ふたつの手法をもとに二重構造の世界を創り出すハイブリッドアニメーションを誕生させた。
「星がきれいなのは、見えないところに花が咲いているからだよ」「大切なことは目には見えないんだ」「さがしものは、たった1本のバラや、ひとくちの水の中にあるかもしれないのに」――。 原作を印象的なものにしている王子の言葉の数々は、物語のその後を描く「現実の世界」にも反響し、原作のメッセージをより鮮やかに浮かび上がらせている。今回は、多大なるプレッシャーをはねのけ、本作を生み出したオズボーン監督に話を聞いた。

映画に出てくる大人の顔は仕事しすぎの顔

――本作では、生気がなく、暗い表情をしている大人たちが多く登場します。大人が観るとドキッとしてしまいそうですが。

この大人の描き方は、サン=テグジュペリの原作における描き方と一緒。僕は、子供のころにあの本を読んで、「大人になったらああなってしまうのだろうか?」という恐怖心を抱いたことがあったんだけど、あらためて読んでみて、その時の気持ちがよみがえってきた。

だからあの大人たちの描写は、原作が持っている感覚と、自分が感じた恐怖感に根差した描写だし、それこそが現代に通じるメッセージがあったと思う。僕自身、仕事のしすぎだなと思ったときにパッと鏡を見ると、映画の中に出てくる大人のような顔をしてしまっているなと思うこともある(笑)。

――この映画は大人たちにとって胸が痛いものではないでしょうか?

僕も胸が痛いです(笑)。この映画に出てくるお母さんは、まるで僕のよう。特に子どもの成績が悪くなったら、自分も何とかしなきゃと思って。あのお母さんみたいになってしまうところがある。でも原作がそうだったように、この映画でも自分自身が今、どういう状態なのか、冷静に考えるきっかけとなったらいいなと思っている。

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