映画「MOZU」は、なぜ振り切れているのか 羽住英一郎監督「俳優の熱量を前面に出す」

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テレビドラマ「MOZU」が映画化し、全国東宝系で公開中だ(C)2015劇場版「MOZU」製作委員会 (C)逢坂剛/集英社
ハードボイルド作家・逢坂剛の代表作を実写化したTBS×WOWOWの共同制作によるテレビドラマ「MOZU」が映画化、全国東宝系で公開中だ。今回の劇場版では、主演の西島秀俊をはじめ、香川照之、真木よう子、池松壮亮、長谷川博己といったレギュラーメンバーが続投。さらに、ビートたけし、伊勢谷友介、松坂桃李といった超豪華キャスト陣が参加している。シリーズ最大の謎とされてきた「ダルマ」との対決を描き出す。
『海猿』シリーズのヒットメーカー羽住英一郎監督率いる日本映画界トップクラスの映像製作チームが、1カ月にわたってフィリピンでの大規模な海外ロケを敢行。そこから生み出された映像は、実物を使ったガン・アクション、公道を完全封鎖してのカーチェイス、トレーラー大爆破など、日本では絶対に実現不可能な迫力だ。「これで最後。だから振り切ろう!」とスタッフやキャストに呼びかけたという羽住監督に、過酷だったという同作の撮影について聞いた。

たけしさんが出なければ話すら変わっていた

――今回の劇場版で、2年以上にわたる「MOZU」プロジェクトが完結したわけですが。

企画の当初から関わってきて、最後までぶれることなく、自分の思ったとおりにできたなという感じがあります。もともと最初は劇場版をやると決まっていなかったのですが、TBSとWOWOWで連続ドラマを2クール放映された。そしてその先には当然、劇場版を目指そうという動きに。ただし、完結編といってもゴールではありません。劇場版を観た人がまたドラマ版に戻ってこられるよう、また入り口もどこから入っても大丈夫なように、グルグルと回り続けるような作品になったらいいなと思っていました。そこに関しては思いどおりのものができたなと思っています。

――「MOZU」という作品には、数々の魅力的な悪役が同時多発的に登場することも魅力のひとつです。池松壮亮さんや松坂桃李さんなど、既存のイメージとは違ったユニークなキャスティングはどこから来たのでしょうか。

キャスティングに関しては、もともとは「ダブルフェイス」(2012)というドラマの座組で行こうとしていました。そこに新たに加わったのが、池松壮亮くんや長谷川博己さんといった、いわゆる悪役側のキャスト。特に新谷宏美という悪役のキャスティングは大変でしたね。地上波のドラマで殺人鬼をキャスティングするにあたってのハードルは非常に高かった。彼に感情移入ができるのか、女装もやってもらわなければならない。あの時に池松くんに出会えたということは、本当に大きかったですね。

確かに「MOZU」に登場する悪役はぶっ飛んでいますが、それぞれに哲学があります。長谷川博己さんふんする東和夫なんて、物語が進むうちにどんどんとぶっ飛んでいるキャラになってしまいましたが、もともとは、手塚治虫の「ブラック・ジャック」に登場するドクター・キリコのイメージでした。人の命を助ける天才的外科医であるブラック・ジャックに対して、治る見込みのない患者に安楽死を施すドクター・キリコ。彼はブラック・ジャックのそばにふらっと現れては、耳元でささやいていく。ドクター・キリコは突き詰めていくと、悪なのか正義なのかわからない存在。東はそういう存在でやりたかったのです。

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