たけしさんが出なければ話すら変わっていた
――今回の劇場版で、2年以上にわたる「MOZU」プロジェクトが完結したわけですが。
企画の当初から関わってきて、最後までぶれることなく、自分の思ったとおりにできたなという感じがあります。もともと最初は劇場版をやると決まっていなかったのですが、TBSとWOWOWで連続ドラマを2クール放映された。そしてその先には当然、劇場版を目指そうという動きに。ただし、完結編といってもゴールではありません。劇場版を観た人がまたドラマ版に戻ってこられるよう、また入り口もどこから入っても大丈夫なように、グルグルと回り続けるような作品になったらいいなと思っていました。そこに関しては思いどおりのものができたなと思っています。
――「MOZU」という作品には、数々の魅力的な悪役が同時多発的に登場することも魅力のひとつです。池松壮亮さんや松坂桃李さんなど、既存のイメージとは違ったユニークなキャスティングはどこから来たのでしょうか。
キャスティングに関しては、もともとは「ダブルフェイス」(2012)というドラマの座組で行こうとしていました。そこに新たに加わったのが、池松壮亮くんや長谷川博己さんといった、いわゆる悪役側のキャスト。特に新谷宏美という悪役のキャスティングは大変でしたね。地上波のドラマで殺人鬼をキャスティングするにあたってのハードルは非常に高かった。彼に感情移入ができるのか、女装もやってもらわなければならない。あの時に池松くんに出会えたということは、本当に大きかったですね。
確かに「MOZU」に登場する悪役はぶっ飛んでいますが、それぞれに哲学があります。長谷川博己さんふんする東和夫なんて、物語が進むうちにどんどんとぶっ飛んでいるキャラになってしまいましたが、もともとは、手塚治虫の「ブラック・ジャック」に登場するドクター・キリコのイメージでした。人の命を助ける天才的外科医であるブラック・ジャックに対して、治る見込みのない患者に安楽死を施すドクター・キリコ。彼はブラック・ジャックのそばにふらっと現れては、耳元でささやいていく。ドクター・キリコは突き詰めていくと、悪なのか正義なのかわからない存在。東はそういう存在でやりたかったのです。
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