《ミドルのための実践的戦略思考》「PDCA」で読み解く大手損害保険会社インド現地法人営業担当部長・浜村の悩み

■解説:ミドルリーダーへの示唆

では、こんな現状を踏まえて、経営の現場において、より実効性のあるPDCAにしていくために、ミドルリーダーは何を心がけるべきなのでしょうか。

まず逆説的ですが、「PDCAの型ありきで考えない」ということが言えます。上記3つの症状の全ての背景にあるのは、「PDCAかくあるべし」というマインドセットが固定化してしまっていることです。しかし、PDCAというのは、当然ながら業界によって異なります。

例えば、数年単位で計画を立てて様々な企業を巻き込みながら緻密に進めなくてはならないようなプラント・プロジェクト事業におけるPDCAと、携帯電話のアプリケーション開発のような事業におけるPDCAでは、それぞれスピード感、重点を置くべきところなどが全く異なります。前者の事業であれば、限定された発注先のニーズをどうやって満たし、そして顔の見えている具体的な競合相手数社に対してどういう優位性を打ち出していくのか、ということを念頭に、入念に計画を練ることが重要になります。この手のビジネスの怖いところは、万が一失敗した時に、後戻りできないことです。したがって、多少スピード感を犠牲にしても、緻密に入念にPlanをしっかり立てた方がいいのです。他方、後者のアプリ事業の事例でいえば、計画も重要ですが、まずは試してみて(Do)、そこから結果(Check)を読み取りどう素早く軌道修正(Act)していくのかの勝負になります。業界の変化のスピードが速く、先読みがしにくい業界であればある程、実行(Do)以降の後工程に比重が移ってきます。

つまりは、業界環境をどう捉えてPDCAを設計するのか、ということが重要になるのです。

加えてどのようなビジネスにおいても深く留意すべき点は、「業界環境は変化する」ということです。先の自動車業界の事例でも書いたとおり、「今まで競合だと思っていなかったようなプレイヤーが業界に入り込んで、業界環境を大きく変える」ということはよくあることです。また、顧客が変わればその期待値も変化します。今まで日本の顧客を相手にしていた企業が、中国に進出した際、現地の顧客側のスピード感にまったくついていけずに右往左往する、ということもよく耳にします。

そして、概して、どの業界においてもスピードは速まってきています。異業種から違うルールを持ちこんで参入してくる競合、トップダウン型のガバナンスで迅速に意思決定をしてくる競合、そして急激な内需の高まりを背景に爆発的な拡大や変化を見せる新興諸国のニーズ。これらのことは、全てPDCAのスピードを速める方向に変化を促します。

だからこそ、我々ミドルリーダーは、「現行のPDCAサイクルありき」で考えず、外部の競争環境に注意を払いながら、絶えずゼロリセットであるべきPDCAサイクルを考えなくてはならないのです。

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