《ミドルのための実践的戦略思考》「PDCA」で読み解く大手損害保険会社インド現地法人営業担当部長・浜村の悩み

■経営現場におけるPDCAの実際

では、経営現場においてPDCAが回せていないケースというと、具体的にどのようなものが挙げられるでしょうか。

【パターン1:スピード感のないPDCA】
 まずは、PDCAはよく考えられ丁寧に実践されているものの、スピード感がない、というパターンが散見されます。日本企業がグローバルの競合にスピードで負ける、ということがよく語られますが、まさにそのケースです。

これはなぜ起きるのでしょうか。まず理解しておきたいのは、PDCAの速度は相対的なものでしかないということです。その企業はずっと同じスピードでPDCAサイクルを回していたとしても、競合がそれ以上のスピードで回し始めれば「遅い」ということになりますし、また顧客がよりスピーディーな行動を求めれば、その瞬間に今までのスピードでは「遅い」ということになるのです。つまり、PDCAに求められるスピード感というのは絶対的なものはなく、そのビジネス環境に依存するのです。


 ちょっと極端な例ですが、自動車市場での変化を見てみましょう。テスラモーターズに代表されるような電気自動車メーカーは、20世紀の自動車業界を支配した「ビッグ・スリー」との対比で「スモール・ハンドレッド」と呼ばれています。その名の通り、小さなベンチャー企業がどんどん参入して新たな商品を投入してきています。

例えばテスラモーターは、会社設立からわずか5年後の2008年前半に1000万円のスポーツカー「ロードスター」を発売し、注目を集めました。小さな組織であることを生かして意思決定を素早くし、外部の力を使いながら、既存の業界では考えられないようなスピードでPDCAを回しているのです。元グーグル日本支社長だった辻野晃一郎氏は、テスラのことを「自動車メーカーという枠組みで見るのではなく、シリコンバレーのIT企業として見なくてはダメだ」と仰っています。スピードが全てであるIT業界のプレイヤーと、大きなヒエラルキーの中で重たく長いPDCAサイクルを回している既存の自動車業界とのスピードの差は歴然としています。これが「相対化」の恐ろしいところです。

では、なぜ環境に合わせてスピードを変えることが出来ないのでしょうか。それにはいくつかの要因がありますが、もっとも大きいのは、個々のメンバーの過去の成功体験によるものです。つまり、「ビジネスというものはこの程度までじっくり練らないとうまくいかない」、という程度感覚を体が覚えてしまっているのです。ですから、それ以下に下げるということが、本能的に難しい。頭で分かっていても、体がついていかないのです。こんなことが、PDCAのスピード感が一向に速くならない背景にあります。

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