《ミドルのための実践的戦略思考》「PDCA」で読み解く大手損害保険会社インド現地法人営業担当部長・浜村の悩み
【パターン2:接続感のないPDCA】
次のパターンは、PDCAの相互の接続感がなく、P・D・C・Aがそれぞれ個別に独立してしまっているものです。このパターンは、例えば典型的には、本質的な目的意識がないままに、現場でひたすら実行(Do)を「やらされている」、といった現象として表れます。つまり、当初立てた目標が実行面まで理解、共有されていないのです。
そのことは、
・ やること(Do)そのものが目的化してしまい、何のためにやっているのかを誰も理解できていない。結果として現場のモチベーションはあがらない。
・ 他方で業績評価(Check)として数値管理はなされ、それに伴いインセンティブがついてくるために、手段を選ばずに実行が行われる。
・ 振り返りや改善(Act)については、そもそも目標が共有されていないために、「なぜその数値が達成できなかったのか」という側面だけに注目が集まり、本来の目的に照らし合わせた改善が行われない。自己満足や部分最適の改善行為が横行する。
といったことにつながり、形ばかりで意味のないPDCAが遂行されることになります。
では、なぜそういうことになってしまうのでしょうか。そこには組織的な分断による血流不全が背景にあります。
つまり、本社や経営企画、はたまたある特定の人物が戦略を考え、それを実行するのは別法人や別組織、といったパターンになると、組織間でうまく情報流通や感情の共有が行われなくなり、結果的にはPDCAがバラバラになってしまうことが多くなります。
さらにその背景にあるのは、責任意識の希薄化です。計画を立てた組織や人物が実行面まで責任を持たない、もしくは持てないケースは実は結構あります。例えば、立てた計画の結果が出るのが数年後、というような事業であり、ローテーションで担当が交代するような組織の場合、一人の人が結果責任の意識を持ちにくくなります。
そうなると、PとDの間に乖離が生まれ、現場を理解しないまま計画作成がなされ、そして被害者意識を持った現場が計画を理解せぬまま実行していく、ということが横行する結果になります。P・D・C・A間に接続感が生じない背景には、こんなことがあります。