顧客との絆づくり型O2Oで世界にも挑戦する無印良品(後編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》
「個々のお客様とコミュニケーションをとる。そうした積極的な姿勢がないのにO2O(オンライン・ツー・オフライン)と言っても進まない。そもそもの企業姿勢が大事。お客様の意見を聞く。お客様とモノづくりをする。近年は同じ考えを『店舗送客』の中で特に意識している」と話すのは、良品計画WEB事業部長を務める奥谷孝司氏。
無印良品が取り組むO2Oの本質は、一人ひとりの顧客が無印良品とかかわってくれる「顧客時間」を大切にすることだ。個々の顧客を知り、双方向の関係を築き、時間を共有することを大事にする。
無印良品は、これまでも顧客とのコミュニケーションに力を入れてきた。「声ナビ」「顧客視点シート」「ものづくりコミュニティー(現在『くらしの良品研究所』にリニューアル)」など、店舗、電話やメール、ネット上での顧客の声を取り入れ、商品・サービスに反映してきた歴史を持つ。
顧客との共同開発商品、「体にフィットするソファ」は、わずか1年半で6万個強を販売、累計80億円を売り上げる大ヒット商品となった。
そういった取り組みが醸成され、ソーシャルメディアの時代を迎えたのだ。
無印良品は、ソーシャルメディア活用での成功企業として知られる。Facebookページのファン数は約79万人と国内企業ページではトップクラス。グローバル向けのFacebookページファン数は41万人に上る(2012年7月5日現在)。
「多くの企業は、お客様からこういうふうに言われたらどうしようと思い悩むだろう。当社は、言われてなんぼだと思ってやれる。O2Oでもソーシャルメディアマーケティングでも、良品計画はすごくやりやすい会社」と奥谷氏は胸を張る。
■奥谷孝司氏
無印良品は、ソーシャルメディアを具体的にどう活用しているのか。
奥谷氏は、「買い物頻度」を基準にして顧客を主に3つに分類する。
最も人数が多いのが、無印良品のソーシャルメディアに来てくれる人たちで、意外にも買い物頻度はいちばん少ない。その次に人数が多いのが無印良品のネットストア会員。3つ目がロイヤルカスタマー、無印良品が非常に好きな人たちだ。ロイヤルカスタマーは、買い物頻度は最も多いが、比較的人数が少ない。顧客ピラミッドでいうところの頂点に属する人たちである。