顧客との絆づくり型O2Oで世界にも挑戦する無印良品(後編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》

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デジタルサイネージを活用したO2Oについて、奥谷氏には、自身が考える未来像がある。一般的には動画などのコンテンツを流すが、それだと一方通行なコミュニケーション。「店舗自体がメディア」だと考えるのなら、買い物客ともっとインタラクティブなやり取りができるサイネージが将来的にできれば面白い、という。

「たとえば、全身が表示できるくらいに巨大なiPadのようなイメージ。前に立ったお客様のことを認識し、触るとチェックインされるとか。お客様が自分の好きな商品を持ってきてスキャンしたら、自分のマイページのお気に入り商品に登録できるとか。そのお客様におすすめの売り場の案内やクーポンが提供できるような。ソーシャルメディアにもつながれる」(奥谷氏)。

残念ながらそこまでは技術が追いついていないが、将来的に近いものが実現できれば、「オフライン・ツー・オンライン・ツー・オフライン」といった流れができるかもしれない。

奥谷氏の考えるO2Oの未来像は尽きない。

「ネットのリアル店舗化」という構想がある。まるで1個1個の商品の展示をするショールームのような実店舗を作る。今の店舗では、幅広い商品が数多く陳列されているため、顧客には1個1個の商品の売り場がわからない。ネットストアには商品が1個1個並んでいる。それをリアル店舗で実現する発想だ。そして、店頭受け取りサービスと組み合わせるという構想。

「お客様がネットで注文や予約をして、来店する日を決めておく。店舗に行くと、レジの代わりに、巨大なお客様用の棚がある。『いつもありがとうございます』とチェックインしてもらい、商品をお渡しする。店舗にあるのはほぼ展示品。こういう店舗だと店員はいらない。商品知識がたくさんある専門家がいればいい。いわゆるアップル直営店のサポート窓口『Genius Bar』みたいに。在庫も多く抱えずに済む。ネットで予約した人が主に来店する。お客様はゆったりと商品を見られる。その店舗に送って店頭受け取りという形にすれば売り上げも発生する。なかなかすぐには実現できないが」

実現すれば、まさにO2Oの進化型だ。

「今後も、リアルの店舗の体験はなくならないと思う。運動のために店に行く人もいれば、商品を見るのを楽しむ人もいる。店舗に行けば新たな発見がある。非日常がある。これがリアル店舗のよさ。だけど、お店に行くというトリガーをどう作るのかということ。その中で、O2Oのようなデジタル的な施策も最近は効果が出てきている」と奥谷氏。

かつてのように、店舗や商品の種類をどんどん増やし、お客様を増やす、それで勝てた時代はよかった。今やその戦略は通用しなくなっている。

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