顧客との絆づくり型O2Oで世界にも挑戦する無印良品(後編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》

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これまでの小売業におけるO2O施策では、個々の顧客の買い物頻度を重要視しているところが多かった。メール会員になってもらって購買頻度を分析し、販促メールを配信する。無印良品では、この施策だけではブランド理解は深まらないと考えている。

「会員の購買履歴を分析する通販型CRMももちろん必要。だがこれからの時代は、お客様自体もメディア化する。買ってくれる人だけではなく、情報を運んでくれる人も大切なお客様だ。買わないかもしれないけど、『いいね』を押してくれる人も存在する」(奥谷氏)。

購買頻度を分析したO2O施策とともに、「無印良品」というブランドへの理解を深めてもらう策が同時に重要だという。

「ロイヤルカスタマーでさえブランドを十分に理解していないかもしれない。今は頻繁に買ってくれていても似たようなブランドが登場したらそちらに移ってしまうかもしれない。無印ブランドのコンセプトやどうしてこの商品を作っているか、を伝えたい。コンセプトや考え方への『共感』を作っていかなくてはいけない」と奥谷氏。

無印良品のソーシャルメディアには、スタッフの個人名やキャラクターが登場しない。匿名性を持たせてソーシャルメディアを運用する。個人が際立つよりも、「無印良品」というブランドからのメッセージだと思ってほしいからだ。

無印良品のO2O施策において、課題はないのか。

現在、無印良品では、店舗の会員カードや店舗で使えるポイント制度のようなものがない。個々の顧客の購買などのデータが店頭ではわからない。顧客に応じた接客やサービスを導入するためには、何らかの方法で顧客を特定することが必要だろう。

たとえば、今後は会員カードのようなものを導入するかどうか、検討課題だ。ソーシャルメディアで店舗に「チェックイン」してもらって顧客を特定する方法もあるが、女性はあまり「チェックイン」を積極的にしないから普及は難しいだろう。

今はゲームでしか使えないMUJI COINも、たとえば、買い物やチェックインをするとMUJI COINがもらえたり、一定レベルに達したら特典がもらえたり、といったさまざまな方法を模索中だ。

店舗のスタッフにもO2Oへの理解や参加意識を高めてもらう取り組みとして、店頭のデジタルサイネージ(電子看板)を活用する実験をしたことがある。Twitterと店頭のデジタルサイネージを連動した施策だ。

有楽町店10周年キャンペーンとして、ソーシャルメディアで「無印良品といえば、○○」の○○にコメントを入れて投稿したユーザーに、有楽町店で使用できる10%オフのクーポンを配信。Twitter上のユーザーのコメントがリアルタイムに店頭のデジタルサイネージに表示されるようにした。店舗にいる顧客も、その場で自分のスマートフォンから参加できる。店頭スタッフも顧客への声掛けにつながる。

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