その頃、雅彦さんは結婚相談所をそろそろ退会しようかと考えていた。15万円ほどの入会金に加えて年会費もかかり、お見合いするたびに1万円の紹介料も取られる。中規模のIT関連会社で働く身としては痛い出費だ。それでも入会したのは、ゆかりさんと同じようなきっかけがある。
結婚相談所に入会、きっかけは「バイクの盗難」
「30代の頃は仕事と趣味に忙しかったので、無理に(相手を)探して結婚したいとは思っていませんでした。趣味はバイクです。1000ccの愛車にいろいろオプションパーツを付けて200万ぐらい費やしていました。でも、車検が終わった直後に盗まれてしまって……。何よりも大事にしていたバイクだったのでショックでしたね。で、ようやく結婚する気持ちになったんです。バイクが盗まれていなかったら今ごろまだ独身だったと思います」
宝塚やバイクに興味がない人にとっては理解のできない入会理由かもしれないが、若さゆえの勢いや「授かり婚」などはないわれらが晩婚さんには、フィーリング以上にタイミングが重要である。仕事や趣味などが落ち着いているときに出会った人こそが運命の人なのだ。ただし、会話すら続かなければ結婚に発展しようがない。
「高いお金を払って会っているのに話がかみ合わない女性ばかりを紹介されて、退会しようかと思っていたんです。そのときに会ったのがゆかりでした。本当は結婚歴のない方を希望していたのですが、彼女がバツイチであることを見落としてお見合いしてしまいました(笑)。結果オーライ、ですけどね」
筆者もバツイチなので、雅彦さんの「見落とし」には感謝をしたい。離婚経験者は性格や生活力に欠陥があると思われがちだが、ゆかりさんのように不可抗力で離婚せざるを得なかったケースも少なくないのだ。
あえて短所を指摘するならば異性を見る目がなかったことだが、それも離婚という手痛い経験によって大きく改善する。見た目や口先だけではなく、その人との共同生活をリアルに想像したうえで結婚できるか否かを判断できるようになるのだ。
一度失敗してしまったことで少しは謙虚にもなっている。筆者の場合も、妻と何かの拍子に言い争いになると、「たぶんオレが間違っているんだろうな」という気持ちになり、すぐに謝ることにしている。初婚のときは「絶対に相手が間違っている」と思っていたのとは正反対だ。これから結婚を考えている人には、晩婚さんだけでなく離婚さんも候補に入れてもらいたい。
ゆかりさんとは会話が弾むと喜んだ雅彦さんに対し、ゆかりさんは「私は話しやすいとは思いませんでした」と笑う。しかし、雅彦さんが川崎市内に長く住んでいて、長男ではないので田舎の実家に戻らなくても大丈夫であることに着目し、連絡先を交換することにした。
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