行革推進会議「秋のレビュ―」の使命とは何か 行政改革に不可欠なPDCAサイクル

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「持ち込み企画」よりも、年金問題などのもっと重要な政策課題もあるのに、秋のレビューで取り上げなかったという批判がある。しかし、秋のレビューのそもそもの目的は、前述のように、来年度予算に向けて予算要求の内容を検証することにある。

あいにく、公的年金の制度は、5年に1度(最近は2014年)の財政検証を受けた直後に制度改革の議論を行い、予算に反映されることとなっているため、来年度予算はほとんど議論する案件がない(詳しくは、東洋経済オンラインの本連載の拙稿「年金は、本当に『100年安心』なのか 5年に1度の『年金の大イベン』」が始まった」を参照されたい)。

それに、大局的に見た公的年金制度の今後のあり方は、筆者も委員を仰せつかる社会保障制度改革推進会議や、厚生労働省の社会保障審議会で議論するという位置づけになっている。だから、今年の秋のレビューでは、扱わなかった。

行政改革に不可欠なPDCAサイクル

秋のレビューの評価結果は、毎年、行政改革推進会議に報告され、各省庁に改善を求める。今年もまもなくその報告を行う予定である。民間有識者が指摘したとしても、法的拘束力はないから、改善を求められた当該省庁が受け流せば指摘は反映されないことになると、秋のレビューの有効性に疑問を持つ見方もある。もちろん、指摘事項に法的拘束力はない。

しかし、秋のレビューの結果は親会議である行政改革推進会議(議長は安倍首相)に報告されるとともに、行政改革のPDCAサイクルを回す中で、行政改革推進会議が毎年のように、指摘事項の反映状況をチェックしている。

PDCAサイクルとは、“Plan”事業の計画を立案、“Do”事業を実施、“Check”事業の効果を点検、“Action”点検結果に基づき改善策を提案、“Action”が終わればまた“Plan”に戻るというサイクルを絶えず繰り返すことを指す。民間企業では、ごく当たり前のように取り組まれているが、行政機関でのPDCAサイクルの徹底は緒に就いたばかりである。

行政改革は、予算を要求する側からみれば疎まれる存在のようだが、国民が納めた税金を有効に使われるようにするにはどうすればよいかを考える重要な取り組みである。所管省庁には予算をいかに要求するかを検討するために会議が設けられたりしているが、行政改革推進会議は、納税者側の意見を代弁する存在であり続けるべきである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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