「介護離職者」を待ち受ける"年収激減"の苦悩 3人に1人が仕事との両立に不安を感じている
年末やお盆に帰省したり、たまに電話したりする中で親の老いを認識し、ふと「介護」の2文字が頭をよぎる――。40代、50代のビジネスパーソンで、こうした経験をする人は少なくないだろう。
「この先直面するかもしれない親の介護に不安を持っているが、何もやっていない人だらけ」。最近、企業が開いた介護関連のセミナ―に招かれたある専門家は、会場に集まった人たちの話を聞いてこんな印象を持ったという。厚生労働省の「平成25年国民生活基礎調査」によれば、親の介護が必要となった主な原因の1位は脳卒中で全体の2割近くを占める(2位は認知症、3位は高齢による衰弱)。親がある日突然倒れて病院に運ばれ、退院後は介護が必要になることもあるわけだ。
そうした中、介護と仕事の両立に漠然とした不安だけを抱えたまま、いざ現実に直面すると危うい。実際、離職した人の中には、介護の主な担い手となったものの、情報を持ち合わせていないために初動が分からず、誰にも相談できず、ただ時間が過ぎていき、「こうなったら自分が辞めるしかない」と思い詰めたケースもある。
介護離職の”予備軍”は約42万人
週刊東洋経済は11月21日号(16日発売)で『介護離職』を特集。その過酷な実態に迫り、両立問題への対応策を探っている。総務省の「平成24年就業構造基本調査」(5年に1回実施)によると、会社などで働きながら介護をしている人は約240万人で、介護・看護のために離職した人(2011年10月~2012年9月)は10.1万人だった。
また、仕事を辞めようと思っている人(就業休止希望者)や転職希望者の中で、介護をしている人は約42万人。仕事を辞めかけている主な理由が介護とは限らないにしても、介護離職の“予備軍”という見方もできるだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査(平成24年度厚生労働省委託調査)では、介護が必要な親がいる就労者のうち、介護と両立した就業継続の可能性について、約3人に1人が「続けられないと思う」と答えている。
実際に自分が介護の主な担い手となった場合、それまでの働き方をすぐに見直して両立を図ることは容易でない。三菱総合研究所の調査(平成26年度「仕事家庭の両立に関する実態把握のための調査」)によると、介護離職した人は、介護を始めてから1年以内に5割近くが両立を断念している。数年間続くことが多い介護のスタート地点で思うようにいかず、退職するケースが多いようだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら