大混乱の「就活後倒し」、割を食ったのは誰か 解禁日程の見直しは2年連続に

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一方、採用する立場の会社サイドはどうでしょうか。大企業と中小企業では採用成果の格差がさらに広がってしまったようです。

解禁日変更に泣いた企業、笑った企業

中小企業は試練の時代に突入したのかもしれません。大企業は政府要請の後ろ倒しを順守。採用日程が繰り下げられたため、大手と中小の採用活動のピークがほぼ重なり、2016年入社組は例年以上に激しい学生の争奪戦に。大企業は8月解禁日の月内に選考を終了する会社が半数。一方で中小企業は秋が深まるまで、大企業に就職が決まらなかった学生たちを採用するための活動がいまだ継続中。それでも目標とする採用数に至らない中小企業が大半のよう。

中小企業は、学生以上に動くゴールポストに対して、困惑と厳しい成果を突き付けられることになりました。大企業は解禁日が変わって、短期決戦になっても採用担当者を増やすことで対応が可能。さらに金融機関をはじめ、リクルーターと呼ばれる採用活動を支援をする社内応援組織まで増強。新たに活用、ないしは復活させた大企業は10%程度あるとも言われます。

・説明会において、先輩社員として登場

・内定者の懇親会に参加

・内定後の学生のフォロー

などに加えて、直接、サークルやゼミの後輩などに声をかけて学生の母集団を大きくする作業にも寄与。このリクルーターを活用する中小企業はわずか。現場の社員たちを採用に駆り出せるだけの態勢的な余裕がないからです。取材した中小製造業の人事部長は

「採用に現場を巻き込むなど不可能。大企業のように期間限定のリクルーターを社内から選びたくても対象者がいません」

と歎いていました。少人数の人事部で、新卒採用の短期決戦に対処しなくてはなりません。説明会でも大企業のように先輩社員が現場の声を紹介することができないので、ありきたりのことを人事部員が話すだけ。面接から選考までの時間もかかり、内定を出すための役員面接の設定にもひと苦労していました。

内定手前で学生を待たせる時間も長引く状況に陥りがちです。優秀な学生は選考途中で辞退するケースが続出。学生に対する接触機会の数や、スピーディな選考プロセスで大企業の優位性が増すばかり。就活の後ろ倒しは、中小企業にとっては何もいいことがなかったのではないでしょうか。

では、解禁日が再び「前倒し」になれば中小企業は多少でも楽になるのか? 残念ながら、そのようなことはありません。人事部の態勢で質量的に違いが大きいからです。では、どうしたらいいのか。

筆者は、外部の専門家を巧みに活用するべきではないかと思います。中小企業だから費用を下げるために採用活動は内製で行うという発想ではなく、外部の専門家の知恵と頭数を活用。大企業との差別化になる説明会や選考プロセスを設計すべきでしょう。その具体的な手法に関しては、別の機会に紹介しますが、大企業との格差を埋めるためには、それなりの覚悟と戦略が必要。中小企業は今後、大胆な発想の転換が必要かもしれません。

 

 

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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