「正直なところ、私はそう遠い計画性を持ってやっておらなかったと思います。まあ、その日その日を大事に仕事をしてきたということが、私をして今日を成さしめたように思うのであります。ひとつ大きな工場を建ててやろうというような遠大な計画は、当時を振り返ってみますと、私は持っておらなかったように思うのです。創業当時は1日1円の売り上げが2円になることを望み、2円が3円になるようにと、その日その日を熱心に努力したにすぎませんでした。
青年にして大志を抱くこと、まことにけっこうですが、しかしそれを達するには、その日その日の仕事を大事にすることによって、そこに一歩一歩の進歩というものが積み上げられていく。それがついに大きな仕事となってくる。こう平凡に解釈していったらいいんじゃないかと思います」
平凡なことを何十年も続けられるか
その日その日を大事に、1歩1歩を積み上げて、というのはあまりに平凡で、人の記憶に残りにくい。しかし、その平凡なことを何十年も続け、些細を積み重ねるならば、そのとき平凡は非凡な結果に変わる。ことに若い人、道のりの第一歩にある人には、そのことを知っておいていただきたい。理想を掲げ大志を抱くことはいいが、遠大な計画を口にして、大言壮語に終わったのでは仕方がない。
言ってみれば、理想を掲げることと、1歩1歩些細を積み重ねていくことは、車の両輪である。何事によらず成功とは、その中心となる者が高き理想と目標をうちたて、実現にあたっては一歩一歩を力強く踏みしめて歩みを続けていくほかはない。1歩1歩の歩みはのろいようであるが、たゆまざれば、驚くべき成果となる。
私たちはついこの当たり前のことを忘れがちになる。だから平凡なこと、当たり前のこと、小さなことをおろそかにして、成功にはとうてい手が届かない。しかし、実は些細の積み重ねにこそ、成功への近道がある。
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