激変する世界、変わらないニッポン--野口悠紀雄×ちきりん白熱対論「数の突破力を教えよう」番外編・その1

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ちきりん 政府の経済統計の多くは、高度成長を目指していた頃に、当時の理念に基づいて数字の計測が始まりました。連続性が大事だということで今でもそのまま情報がまとめられていて、歴史的な経緯を知らないと内容を把握するのが難しいです。

野口 必要性が変わった場合もあるのです。日本では土地バブルがあったので、地価の統計が細かく整理された。しかし、今どれほど重要かは疑問があります。一方で金融は複雑化しているのに、それを統計でとらえきれていない。

国際収支の中に資本取引の項目がありますが、タックスヘイブン経由の取引などはほとんどわからない。為替レートの動きに大きな影響を与えているのに、実際の統計では「その他」と「誤差脱漏」になっている。これは日本だけの問題ではありませんが、国際的な資本移動統計は、非常に困った状況にある。

ちきりん 統計で「その他」の数字が一番大きいというのは、統計としてもうダメですね。

野口 そうです。自己否定したことになる。

ちきりん 研究もできないし、政策立案のベースも手に入らない。

野口 農水省の統計はその典型。「統計の農水省」といわれているほど、あらゆる統計がある。聞いたこともないような作物のデータがすごく詳しく調べられている。

ちきりん それは農業分野に予算を要求しやすくするために、していることなのでしょうか?

野口 担当者の仕事を奪えないから統計を取り続けているのです。日本では食料管理制度の下で、政府がコメをコントロールしていた。だからデータを集めるために、たくさんの調査員を必要とした。そのときの体制がまだ残っているのです。一方で、税務署には人が足りない。公務員数の削減を論じる前に、余っている部署から異動させることが必要です。


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