激変する世界、変わらないニッポン--野口悠紀雄×ちきりん白熱対論「数の突破力を教えよう」番外編・その1
ちきりん 私が習ったのは38億人。それがいま70億人ですから、いかに世界の人口の伸びが急だったかわかりますね。伸びるという話では、世界全体で一定レベル以上の消費ができる人の数が大幅に伸びているのも気になっています。
20年前に私が海外旅行を始めた頃、海外旅行に出られる人は、世界で3億人ぐらいだったと思います。日本人の一部と、米国人の半分、ヨーロッパ人の半分という感じでしょうか。あとはアラブや華僑のお金持ち。
でも今後は新興国でも所得が増えて、海外旅行を始める人の数も増える。海外を旅行する人の数は次の10年間で、今の3倍とか4倍になりかねない。それだけ増えれば、旅行やエンターテインメントの市場規模も3、4倍になる。
しかも今までは海外旅行をするのはほとんど欧米人だったのが、今後はこれまでと非常に違うタイプの人が旅行するようになるのも、すごく面白い。いずれチップの慣行などはなくなってしまうのではとないかと思ってしまいます。
野口 旅行といえば、ヨーロッパなどを旅行していると、中国人が目につく。世界を旅していて、中国人旅行者が増えたと感じませんか。
ちきりん はい。最近はヨーロッパもそうですね。あと、特にアジアの観光地。マカオや香港はもちろんですけれど、シンガポールやインドネシアなどでも、中国人向けに大規模なアトラクションや商業施設が作られている。
野口 中国の人口の大きさからいえば、当たり前ですね。それをどの程度みんなが認識しているか。つまり「中国の人口は日本の10倍」ということを、どれだけ頭において議論しているか。たとえば、中国のGDPが日本を抜くのは当たり前の話です。
ちきりん そう思います。今まで日本のGDPの規模が、10倍以上の人口をもつ中国に勝てていたことのほうがむしろすごいことだと思います。
野口 GDPの規模で抜かれたということより、中国の1人当たりGDPがいまだに日本の10分の1だということのほうが、はるかに重要なことです。