暴行動画の拡散は、このような不条理な状況に照らし合わせると、半ば必然といえる面がある。これが前回の記事で述べた論点であり、今後「暴力が暴力として認知されない」聖域を解体することが非常に重要になってくる大きな理由でもある。
暴行を「楽しむ仲間」の存在も指摘されるべきだ
その一方で、暴行動画の拡散を促してしまう別の要因を指摘しておかなければならない。いじめや虐待など、学校内における暴力をいわばエンターテインメントの素材に変えてしまう、SNSとスマートフォンというメディアの影響力だ。
現在、アメリカでは、全国各地で、スマホなどによる動画撮影とその共有が学校内での生徒間の暴力行為を助長し、場合によってはエスカレーションの原因になっていることが大問題になっている。共有された動画によって、新たないじめや暴力を誘発することも頻繁に見られるという。
ニューヨーク・タイムズによると、マサチューセッツ州、カリフォルニア州、ジョージア州、テキサス州を含む12州以上でこの問題を調査した結果、中高生がスマホやSNSを悪用し、仲間内で残虐な暴行の映像を仕組んだり、煽動したり、撮影したり、拡散したりするパターンが明らかになった(How Student Phones and Social Media Are Fueling Fights in Schools/2024年12月15日/ The New York Times)。
最初のきっかけが口論やネット上での悪口などであったとしても、その後、生徒たちが実際に暴言を吐いたり、暴行を加えている様子を動画で撮影して、あえて相手を挑発することによって修羅場を作り出すのである。生徒たちはその後、その動画を共有し、コメントを付け合うことで、さらなる暴力を引き起こしているのだ。
高校生向けの時事ニュース雑誌『The New York Times Upfront』では、生々しい現場の声を伝えている。ノースカロライナ州の公立学校システムの教育委員会委員長であるクリス・ヒーガティ氏は、23年に高校の体育館で起こった乱闘騒ぎで、「非常に多くの学生が群がって携帯電話で録画し、ソーシャルメディアに投稿し、最高の写真を撮ろうとし、自分自身や他の人を危険にさらした」と述べた(Phone-Fueled Fights-How mobile technology is stoking violence in American schools/2025年3月31日/Upfront Scholastic)。



















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