――これだけ受験が過熱化すると、反動が大きいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
松本さん そうですね。インドの受験の状況でよく使われる言葉が「セブンイヤーズトラウマ」というものです。
Netflixで配信されているインドドラマシリーズで、インドの昨今の苛烈な大学受験の様子を描いた『Kota Factory』という作品にもたびたび出てくるフレーズなのですが、これは、インドでは詐欺罪の懲役が7年程度と言われていて、受験生活は“自分を欺いたことによる7年の懲役”だと皮肉を込めているんですね。
ダミースクールで学校生活を捨て、朝から晩まで塾で勉強し続ける。「本当はIITに行きたいわけでもないのに、親や地域の期待に応えるために、自分を偽って勉強する」という子も多いです。
そうした受験生活を経て、うまくIITに受かっても、「自分は何をやりたいのかわからない」「燃え尽きてしまった」という学生が少なくない。他方、落ちてしまった子は、すべてを賭けて勉強してきたのに合格できなかったという自己否定感から抜け出すのに、精神的な喪失感を抱いてしまう。
そうした、受験勉強の期間と、受かっても落ちても、その精神的なストレスから回復するのに、合計7年程度もかかってしまう。自分を欺いて勉強をすることで、7年前後のトラウマに陥ってしまう、という意味で、セブンイヤーズトラウマ、なのです。
数字で見るとさらに深刻で、2021年には年間1万3000人以上の学生が自殺しています。人口は日本の約10倍ですが、日本の学生自殺と比べても異常に高い数字だと言えるでしょう。
「詰め込み」から「思考力」へ、インド教育の大転換
――こうした状況を変えようと、インド政府は「NEP2020」という大改革を打ち出しましたね。
松本さん NEP2020(National Education Policy 2020)は、34年ぶりの大規模教育改革です。ポイントはいくつもありますが、代表的なものを挙げると、
大きな考え方として、様々なアプローチを通して、これまでの「詰め込み・ペーパーテスト一発勝負」だけではなく、思考力・判断力・表現力を育てようという方向に舵を切ろうとしています。
とはいえ、人口と競争の規模があまりに大きいので、改革はまだ道半ば。今は「ドラゴン桜的な受験」と「新しい教育」の両方が同時進行している、そんな過渡期だと思います。



















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