――日本にも塾や予備校はありますが、インドではその存在感が桁違いだと聞きました。
松本さん 象徴的なのが、ラジャスタン州の地方都市コタです。ここは「受験の聖地」、「予備校の街」と呼ばれていて、IITや医大を目指す全国の受験生が集まっています。
特徴的なのは「ダミースクール」と呼ばれる仕組みです。簡単に言うと、学校には“籍だけ置いて”、実際は一切通わず、隣のコーチングセンター(予備校)で一日中勉強する、というものです。
学校側は、最低限の出席とテストを形だけ行い、卒業証書だけ出す。中身のある授業はほぼゼロ。その代わり、受験指導は予備校がすべて担う。
公的な数字ではありませんが、一説ではインド全体で、十数万〜二十数万人がこうしたダミースクールに登録していると推計されています。
法律的にはグレーですが、自分が知る限りだと、現地の塾の入会案内の際に普通に「うちはダミースクールも持っていますが、使いますか?」と聞かれた、という人もかなり多く、“公然の秘密”として機能しているのが実態です。
IITに受かれば一族が救われる
――そこまでしてでも、名門大学に入りたい理由は何でしょうか。
松本さん 一言でいえば、人生のリターンが桁違いだからです。
IIT卒業生の平均年収は、インドの他の一般大学卒の数倍以上と言われており、大学卒が全体の30%前後のインドにおいては、言わずもがな『上澄み』になるわけです。
IITの中でも上位層の生徒になると、初任給ですでに2000万円超、最高例で約9000万円。さらにBMWなどの高級車や最新PC、ワールドカップ観戦チケットまで付くといった「メジャーリーガーの契約」みたいなオファーが、実際に出ています。
先ほども少し触れましたが、一族の誰かがそうした高収入を得れば、家族全体の生活が一気に変わります。
だから親も親戚も口を揃えて、「あなたが有名大学に行ってくれたら、うちの一族は救われる」と言われる。受験生本人にのしかかるプレッシャーは、日本で大学受験をするそれとは、大きく異なっていると言わざるをえないでしょう。



















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