ソニーから独立して11年、VAIOが法人PC市場で市場平均を上回る成長を遂げた理由。安曇野工場に集約された競争力の源泉
ソニーから独立して11年、法人PC市場で売上成長率が市場平均を下回ったことがないというVAIO。その競争力の源泉を探るため、長野県安曇野市の本社工場を訪ねた。
12月10日、長野県安曇野市。北アルプスの山々が雪化粧を始めたこの日、VAIO本社工場でメディア向けの工場見学会が開催された。
VAIOは2014年にソニーから独立したパソコン専業メーカーだ。法人向けノートパソコンを主力とし、売上の約9割をB2B事業が占める。同社が公表したデータによれば、21年下期から22年上期を基準とした場合、現在までに売上は3倍に成長した。同期間の市場成長率は1.5倍であり、VAIOは市場を大きく上回るペースで拡大を続けている。
この日、12月1日付で社長に就任したばかりの糸岡健氏が報道陣の前に姿を見せた。糸岡氏は1992年にソニーに入社し、1996年のVAIO事業部発足時から携わってきた人物だ。欧州事業の立ち上げ、CFO、オペレーション本部長を経て、今回の社長就任に至った。
糸岡氏は就任にあたり、ソニー創業者・井深大氏の設立趣意書に触れながら、こう語った。
「原点はものづくりへの情熱と未来の希望である。我々が目指すのは、新たな理想工場の形だ」
理想工場という言葉には、安曇野という立地への強い思い入れがにじむ。VAIOの本社工場には、設計、製造、品質保証、カスタマーサポート、修理、キッティング……ものづくりとサービスに関わるすべての部門が同一の建屋に集約されている。この構造こそが、VAIOの競争力を支える基盤となっている。
「2人のお客様」という考え方
VAIOが14年の独立時に定めたのが、「2人のお客様」という考え方だ。
1人目は購入を決める情報システム部門(情シス)。2人目は実際にPCを使うエンドユーザーだ。設計責任者の林薫氏は、この定義の背景をこう説明する。


















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